友人の背中には、小さな瘤があった。

皮膚科では粉瘤と診断され、皮脂腺や毛穴に脂肪や老廃物が
溜まったものだと説明された。
粉瘤なら、簡単な手術で取れる。
彼は手術を受け、小さな瘤の中身は取り除かれたが、
粉瘤など見慣れているはずの医師が、不思議そうに見ている。
「普通、こんな色じゃないんですよ」

医師は、黒ずんだ梅干のような姿のものをピンセットで突付いた。

「もっと白っぽいのが普通なんだけどな」

医師はピンセットでつまみ、医療用の鋏で粉瘤を切り開いた。
中から出てきたのは、黒く小さな湿っぽい塊。
やたら臭かったらしい。
医師と共に、その黒い異物を見ている彼には、ふとそれが
虫の糞に見えた。
彼には心当たりがある。
虫の糞なら、俺にも心当たりがあった。

彼の服や髪の毛から、小さな青虫が這い出てくるのを
俺は何度も見ていた。

秋の山で彼は大きな蛾の毒にやられ、あちこちの皮膚が
ひどくかぶれたことがあった。
寝袋の中に蛾が入り込んだのに気付かず、背中で押し潰したのだ。

つづく