「はい?」と振り返ると30くらいの着物を着た男性がいました。
「それ、私の忘れ物なんです。すみません、ご迷惑をおかけしました。」
「ああ、いえ、どうぞ・・」と驚いていた祖父が渡すと
「ありがとうございます。」男性は箱を受け取ると降りて行きました。
「怪しいな・・・」と思った祖父も汽車を降りて男性を探しました。
駅員に「着物の男を見なかった?」と聞いても「見ていない」との答えしか返って来ません。「変だな」と思ったそうですが、「地元の人なんだろうか?」と思った祖父は探すのを止めて汽車に戻りました。
翌朝、線路が復旧するまで時間がかかるとの事だったので、祖父は村へ食事に行きました。ある食堂に入ろうとしたら張り紙がありました。
「尋ね人」と書いてあり、その下には特徴と似顔絵がありました。
その似顔絵は昨晩、汽車にいた男性、そのものだったそうです。
食堂に入り、女将さんにその事を言うと
「ああ、駅裏の山に入ったままでね。なんでも、山賊が金を埋めたとかって話があってね。それを探しに行ったままなんだよ。地元の人間は入ろうともしないけどさ。」
「なんで入らないんですか?お宝があるかもって話なのに?」
「あの山はね、神隠しに遭うんだよ。あの男は町から来たから知らなかったのかも知れないけど、処刑された山賊の祟りとか、昔、合戦があったとか。
あまりいい話がないしねえ。」
「じゃあ、あの男性は一体?」
「神隠しにあっても、お宝を探してるんじゃないかい?欲は怖いねえ。」
女将さんはそう言うと、「厄払いだ」と言って祖父に熱燗を振舞ったそうです。