やがて、義雄さんは女性を連れて歩き出しました。歩き出してからは義雄さんにも余裕が出てきて『上手く口説けないもんか』ぐらいまで考えていました。しかし、それと共に何となく…具体的に何が、という訳ではないのですが、違和感を感じるようになりました。
女性は、健脚で知られる義雄さんの後を、息も乱さず付いて来ます。まあ、それもおかしいが、それだけじゃない。何かがおかしい。でも、何が変なんだろう…?
そんな事を考えつつ、義雄さんは後ろをチラリと振り返ります。女性はやはり疲れた様子も無く、笑顔すら浮かべて付いてきています。
『まぁ美人だし、細かい事は気にしてもしょうがねぇ』と思ってると、女性が突然、話しかけてきました。
「あんた、A街のBって所、知ってる?」「B?知らねぇなぁ…」「私ねぇ、Bのねぇ…」
女性は、A街のBという場所に住む、□□という人物の話を始めました。まあ、早い話が、彼女は□□家主人の妾(愛人)だというのです。
「そんな人が、何でこんな所に1人で居るんだね?」と言いながら振り向いた義雄さんはビックリしました。彼女はいつからそうしていたのか、義雄さんの背中に自分の身体をベッタリくっつくけて、彼のの耳元で囁くように話しかけていたのです。
そして、ここに至って義雄さんは、ずっと抱いていた違和感にようやく、気付きました。
『コイツ、俺と出会ってからずっと後ろを歩いてるのに、どうして足音がしないんだ?さっきからずっと、俺が1人で歩いてるみたいじゃねえか…この女、変だぞ…』
不安に駆られた義雄さんは、何とか女性から身体を離そうとします。ですが、何故か身体が動かない…。
つづく