私自身の体験じゃないのですが、長い付き合いのある山先輩(と言っても、かなりの年齢。仮に、義一さんとします)から聞いた話をします。
この話は、義一さんの祖父が、さらに自身の祖父(義一さんから数えれば、5代前の人)から聞いた話を、日記に書いて記録していたもので、義一さんが祖父の遺品を整理していた時に、見つけたのだそうです。そして今回の話は、その5代前のご先祖様(仮に義雄さん、とします)です。
だいぶ長くなりますので、読み飛ばして頂いても構いません。
場所は東北某県、時代は明治初期。山深い村落で起きた話です。
当時の人々は皆そうでしたが、特に義雄さんは健脚で知られ、普通の人が一里歩くだけの時間があれば、三里は歩く、という人でした。それでいて、肝も据わっている。そんな彼ですので、隣村への用事とかには、非常に重宝がられていたそうです。
そんなある日、彼は県境を越えた遠くにある大きな街へ、用事で出掛ける事になりました。
朝、暗いうちから家を出て、義雄さんは山道をドンドン進んでいきました。山道…と言っても当時の事ですから、山の中に獣道のような細い道があるだけ、といった状態です。
山道は片方が山で、もう片方が急斜面となっており、底には川が流れています。踏み外したら谷底へ真っ逆さまです。が、度胸のある義雄さんは恐れる事なく、進み続けます。
つづく