田舎の友人から聞いた話です。
友人から聞いた話です。
彼は御茶を飲むのが趣味で、自宅に小さいながら茶畑を作った程です。

田舎では野草や薬草を緑茶の葉と一緒に入れて、香りを楽しんだり薬にしたりすることがあり、彼も色々な葉を捜して山に入ることが多かったそうです。

ある、春の事、いつものように葉を捜して山に入ったところ、見事な山桜を見つけました。満開の花にいい香りがし、「桜茶」を作ろうと思い、いくつか花を取り持ち帰りました。

自宅に持ち帰り、早速、淹れてみると、とても美味でした。
翌日、花が散っても飲めるように、と山に出かけて多めに花を取り、酒精に漬け込んで取って置きました。

翌年の春、また山桜の花を取りに行き、保存用に漬け込んだそうです。
その年の夏に台風が来ました。大きな台風で被害も多かったそうです。

台風が過ぎ、しばらくして桜茶を入れてみると、味が変わっています。

普段は爽やかな後味が、苦く、ドロっとした感じだったそうです。

「漬け込みに失敗したのかな?」と思い、勿体無いと思いつつも、花を捨て、翌年の春、再び山に入ったところ、山桜が倒れて、完全に枯れていました。去年の台風で倒れたようです。

全く花は無く、自然のまま朽ち果てた桜がそこにありました。
「多分さ、花は母体の死を伝えてくれたんじゃないかな?」
彼はその話をそう締めくくりました。