彼とは気が合うわけではなかったが、なぜか一緒に山へ行く機会が多かった。

互いに、何となく付き合いづらい奴だと思いながら、
俺は彼の技術に何度も助けられ、
彼は俺の身軽さに引っ張られて山をうろついていた。

同じテントの中、ほとんど黙り込んでいた。

沈黙が心地良い相手ではなかったが、無理に会話しても、
かえって気詰まりになる。
おそらく、一番実のある会話は、
「明日は何時起き?」
「4時くらいでいいべ」
そんなところだ。

いつの間にか彼と俺は、同じような時期に、
同じような怪我をするようになった。

彼が泥酔して階段で転倒し、右足首を捻挫すれば、俺は俺で
沢歩きの最中に転落し、右足首を捻挫した。

彼が山で落石を左目に喰らい、視力を低下させた頃、
俺の左目の視界は、少しだけ白く霞むようになった。

眼科で診察を受けたが異常は見つからず、原因は不明だった。
つづく