私は心霊現象はまったく信じず、今までそのたぐいの現象に出会ったこともありませんでした。
ですから、このときも比較的冷静でした。
まず、部員を落ち着かせて、音の原因を探ることにしました。最初に誰かのいたずらかと思い、「おい!そこに誰か居るのか?」と祠やその周辺の闇に向かって叫んでみました。しかし、何の反応もありません。
次に祠に誰かが隠れているのかと思い、キャップライトを装着して祠を調べてみました。入り口は開かず、格子から中を窺ってみましたが、中は荒れ果てたがらんどうで、人も太鼓も見あたりませんでした。
祠の周囲を、草をかき分けながら一周してみましたが、やはり人の気配も痕跡もまったくありません。
何かの加減で祠が揺れて、木材が何かに当たった音かとも思い、三人で祠を押して揺らしてみましたが、かすかにきしみ音が聞こえただけでした。
原因が分からなくなったとたんに、急に背筋に寒いものが降りてきます。
テントの前まで戻った私たちは車座になり、顔をつき合わせました。
私:「おい!なんかやばいな!」
部員:「やばいっすよ!」
私:「逃げるか!」
部員:「逃げましょう!」
全員一致でこの場から脱出することになり、直ちに広げた食器をザックにたたき込み、張ったテントはそのまま三人の頭の上に持ち上げて、駆け足でスタコラ逃げ出しました。
途中で後ろを振り返ると、なんだか嫌なものが見えそうな気がして、まっすぐ前を見ながら一心不乱に走りました。ほかの部員も同じ気持ちだったらしく、なにもしゃべらず同じように走っています。
真っ暗な砂利道を、どれほど走ったでしょうか?しばらくすると、小さな町並みが見えてきました。町はずれの小学校の校庭に荷物を下ろし、私たちはやっと一息つけました。
つづく