手洗い場に引かれた清水で手と口を濯ぎ、大岩に柏手を打って詣でた。

祠へも賽銭を投じ、もう一度詣でる。
甘味の好きな神様といわれており、人里離れているというのに
祠の前に菓子類の絶えた事は無い。
子供の頃を思い出して、供えてある物の中から飴を一つ貰った。

祠の下がりものを食べると一年間、風邪を引かないというご利益がある。
本当にあらたかであったと思う。子供の頃は風邪とは無縁だった。
そこはいつも風が強い。悪い風を追い払ってくれるのかもしれない。

後日、この祠の秘密の謂れを聞いて、何とも苦い思いをしたが、
両面のある神様は珍しくない。感謝は忘れまいと思う。

遠く離れた京都で、とある有名な祭りが行われる期間。
この祠の劔に捧げ物をして祈れば、願いが聞き届けられる事があるという。
海の物、山の物、酒一升、米一俵、平絹一反。上等な甘味。
錦絵なども喜ばれるそうだ。
神意を確かめる為に、兎を一羽、籠に入れて一緒に納める。

つづく