あれっ?

ある晩、ふと気が付いたことを姉に話してみた。
「玄関を出たすぐ横の駐輪場があるでしょ。
 二つあるうちの一つだけ、ガラーンとして何も置かれていないよねぇ。
 前は両方とも満車だったと思うんだけど、どうしたんだろ?」

姉は呆れたように言った。

「あんた今頃何言ってンの。
 何も置かれてない方って、すぐ上の人が落ちた場所だよ」

…あ。確かに位置的にはそうなるねー。

「いやでも事故の後、掃除が終わってからは、皆普通に駐車してたんだけどねー」

え? まさか何か出るようになったとか…

「日が落ちてあそこに行くとさ、大きな黒いゴミ袋が落ちているんだって。
 生ゴミでも入っているかのように、汚れた水が滴っているのが。
 ただそのゴミ袋、ズリズリとゆっくり這ってくるらしいのね。
 駐輪場のコンクリの上に、黒い水の線を引きながら。
 びっくりして固まっているとね、足元まで這って来たそれがね …」

「話しかけてくるんだって」

「痛いようって、震える声で。この棟の住民の間じゃ、結構話題になった話だよ。
 知らないの? あんた、もっと近所付き合いしなさいな」
結局、久しぶりに姉に説教されてしまい、どうにも釈然としなかったそうだ。