「○○○号室のあの人、多分もうじきここを出て行くね」

朝方、ゴミ出しのついでに井戸端会議に参加していると、主婦の一人が目配せした。


その視線の先には、ゴミ捨て場から引き上げる女性の姿があった。
あまり親しくない人だ。気のせいか顔色が悪い。

何でわかるんです?

そう聞くと、こんな答えが返ってきた。
「この間の粗大ゴミの日にね、あそこの人、山のように鏡を出してたんだ。
 鏡台から洗面台のから、手鏡まで。
 ここに住んでる人が鏡を捨てだしたら、まず間違いなく出て行くんだよね、
 これまでの経験からすると」
「出て行く理由? それは聞いたことないねぇ。
 大方、鏡を覗き込むと何かが見えるようになったからじゃない?」
この発言を聞いて、皆が頷いていた。

あー、余所の家にも出ているんだ、アレ。
同じモノかどうかはわからないけど。

怖い目に遭っているのが自分たちだけではないとわかって、少し安心したそうだ。