残業で深夜遅くに帰宅した時のこと。
ドアを開けてつんのめりそうになる。
寝間着姿に褞袍を羽織った姉が、玄関の三和土に座り込んで紅茶を啜っていたからだ。
こんな時間にこんな所で、一体どうしたん?
姉は妹を見て明らかにホッとした顔で、質問に答えた。
「あんたが遅くなるって知ってたから、先に寝ちゃおうと布団を引いたのね。
歯を磨いて寝床に戻ったら—」
…戻ったらー?
「誰かが私の布団で寝ていたの」
人の形に膨らんだ布団の端から、長い髪の毛が溢れているのが見えていた。
とても布団を捲る気になれず、ここであんたが帰るのを待っていた…
そう姉は一気に話した。
二人でおっかなびっくり床に忍びよる。
布団は確かに膨らんでいた。しかしもう髪の毛は見えていない。
覚悟を決めて捲った。何もいない。布団も冷たいままだった。
その後二人揃って就寝したのだが、満足に眠れなかったそうだ。