鏡の中に女を見てからというもの、
「何かが明らかに、部屋の中に入り込んできたような雰囲気になったの」
—そう姉妹は口を揃えて言う。
もふもふが入り込んでいたじゃないか。
「違うの、アレじゃなくて、もっと何か不気味なモノが来だしたの」
それって、女性の幽霊が見えだしたってことか?
そう尋ねてみると首を振る。
女に限らず、何かおかしな物が、頻繁に見えたり感じられるようになったらしい。
「例えばね—」
座卓に座って雑誌を読んでいた時に、ふと気がついてしまう。
閉められたカーテンの下裾から、ニュッと足が出されていた。
姉の物ではない。どう見ても男の足だ。親指の腹に毛が生えている。
困ったことに、カーテンが膨らんでいるのは足首の部分だけだった。
足の持ち主がいる筈の空間には、何も潜んではいないのだ。
目を逸らし、一回わざとらしい咳払いをした。
ゆっくりと目を戻すと、もう足は見えなくなっている。
ただ、何かがいたという痕跡を示すかのように、カーテンは少し揺れていた。
「こんな感じで、人間の身体のパーツだけがちょこちょこ見え始めたの。
あ、団栗は置かれなくなったんだけどねー」
団栗の方が遙かにマシじゃないのか、それって。
「そうなのー。だから問題なの」
そう言って姉妹は顰め面をした。