晩御飯を食べ終わって、一人まったりとテレビを見ていた時のこと。

姉は風呂を使っている。
と、視界の隅に何か動く物が見えた。
お姉ちゃん、もうお風呂から上がったのか。今日は早いー。
…あれ? でもバスの戸が開く音なんてしなかったような
そう思い洗面所を見やってから硬直する。
洗面所には何もいなかった。
それなのに、鏡に女の姿が写っている。
髪の長い女が、怒ったような顔で睨んでいた。
思わず、目が合ってしまったという。

それって、お前さんのことを直で睨んでいたってことじゃないか。
「嫌だよー違うよー、目が合ったのは偶然だよー!」

私が指摘すると、猛然と頭を振って否定する。
「とにかく、そこで悲鳴を上げちゃったのね。
 結構大声だったみたい。お姉ちゃん、お風呂から飛び出してきたから」

事情を聞いた姉は、またぁ?というようにゲンナリとした顔になったらしい。
恐らくこの話を聞かされていた私も、似たような顔になっていたと思う。
ひょっとしてさ、その髪の長い女って、誰か知り合いの顔してなかったか?
思うところあって聞いてみたのだが、再び否定された。

「ううん、岩崎宏美系の上品な美人だったよ。
 ああいう雰囲気の知り合いはいないなぁ。
 いたら多分口説いてる」

…余裕あるじゃねぇか。
そう思ったけれど、口には出さなかった。