山裾の辺鄙な場所にある某大学。そこの寮に住んでいた学生たちが仲間内で百物語を催した。
怪談を話し終える毎に蝋燭の火を消していく、というあれである。
とは言っても、百もの話を用意できるような参加者の数では無く、灯された蝋燭は二十本ほど。
規模の小さな催しであったが、いくつかの話を終えて蝋燭の灯りが徐々に失われていくと、
肌をかすめる風が涼しく感じられるような良い雰囲気になってきた。
ちょうどそこへ、寮生の最年長者であるM先輩がバイト先から帰宅した。
M先輩は真っ暗な部屋の中で何事かをやっている後輩たちを見て変に思ったらしいが、
理由を聞くと「アホな事やっとるなー」などと言いながらも、その場にどかりと腰を据えた。
参加者が一人加わり、座はより盛り上がるかと思われた。
ところがこのM先輩というのが、幽霊だの呪いだのといった事を信じないばかりか、
娯楽として楽しむ余裕も持ち合わせていないオカルト否定者で、話の最中にも
「そんな馬鹿な事があるか」「嘘つけ、証拠はあるのか」「自分の目で見ない事には信じられんな」
そういった無粋な台詞で口を挟み、話し手に食って掛かった。
(場にふさわしくないヤツが来たな…)と誰もが思ったが、一応、先輩なので何も言えなかった。
つづく