夏もすっかり終わる頃、親戚が幼い姪っ子を連れて遊びに来た。

というか、姉に縁談を持ってきたものらしい。
姉が親戚と押し問答している間、彼女が姪の相手をすることになった。

公園にでも行こうかと準備して靴を履いていると、姪はいち早く外に飛び出していく。
待ちなさーい、と声を掛けてホールを見たが、幼い親族の姿は見えない。
あれ、もうエレベーターに乗ったかな? ホールに足を進めると、その向こうの非常
階段へ通じる扉が開いて、姪が現れた。

「ダメだよ、一人で勝手に出歩いちゃ」と注意する友人を遮って、姪がこう訴える。
「あのね、あの向こうからね、女の人がおいでおいでって呼んでたの」

女の人? 呼んでた?
「うん。だから近くによったんだけど、とても怖いから帰ってきちゃったの」

誰がいるのかしらと気になって、非常階段へ進んでみた。
人っ子一人いない。いないねぇと言う友人に向かい、姪は「あそこにいるじゃん」と
上の踊り場を指さした。

ハッとした。ボヤッとだが、あの黒い影が佇んでいた。いつものように敬礼している。

もしかして○○ちゃん、その人の姿が、はっきり見えるの?
「うん、髪の長い女の人がニコニコ笑ってるよ。
 今、私たちに向かって、おいでおいでしてる」

… あー、あれって、敬礼していたんじゃなかったのね

つづく