冬山に登ったときの事

その山は山頂に小さな祠があって、その山の神様が奉られていると聞いていました。
雪とかは降っていませんでしたが、風が冷たく寒い日でした。
頂上に到着し、祠に手を合わせるとコンロを出してコーヒーを沸かしました。

その日のパーティーは4人でしたが、何故かコップは5つ用意されていました。
「あれ、部長、今日は4人ですけど?」と自分が言うと、
「いいんだよ、5つで。」と部長は言いながらコーヒーを沸かし、何故か5つ目のコップには砂糖を多めに入れていました。
各々がコップを手に取り、飲もうとすると「ちょっと待てよ。」
と部長は言い、5つ目のコップを祠に供え、「無事に帰れますように」
と手を合わせてから、「それじゃあ、飲もうか。」と口を付けました。

「何故、あんな事を?」と聞くと、部長は「まあ、礼儀ってやつかな。」
と言って、さらに一言「それに、ここの神様って女性だろ?だから、甘い方が好きかと砂糖多めに入れたんだよ。」そう言いました。

しばらくして、「じゃあ、そろそろ帰るか。」という事になり部長が供えたカップを回収に行くと、祠の前でニヤっと笑いました。
「どうしたんすか?」と聞くと、部長は無言でカップを見せてきました。

並々と入っていたカップは空になっていました。
「よかったな、これで無事に帰れる。」そう言って皆で笑いました。