会話が止まってしまったまま何分かするとまた男が前方に見えました。
歩いている男は先ほどと同じように立ち止まり、こちらを見ています。
「まただ・・・」
今度ははっきり分かりました。同じ男です。

どうやら友人たちも気づいたようで、顔が青いのが分かります。
私の顔もおそらく同じように青かったでしょう。
完全に黙ってしまったまま数分が経ったころ、またそれは現れました。
「・・・」
やはり同じ顔、同じ人間です。
なにかまずいものを見てしまったという思いがぐるぐると頭の中を回っています。

もう行楽気分など吹き飛んでいました。
結局、4度目にすれ違ったのを最後にそれとすれ違うことはありませんでした。

私たちは戸田村についた後、そのまま帰ることにしました。もうバスで同じルートを通る気にはなれなかったので、船で沼津まで移動して帰ることにしました。
家に着くまでとくに事故も事件も起きず、その後も特に悪いことなど起きませんでしたが当分の間は気分が晴れませんでした。

友人たちとは今も時々会いますが普段は話題にしません。ですが、酔ったときになど
「あれは同じ男だった。何度もすれ違った」といいますので記憶違いや思い込みではないと思います。

今もって正体も意味も分かりませんが、あれは一体なんだったのでしょうか?