父は独身時代から登山が趣味で
よく仕事が休みの日に山へ行っていたそうだ
その日も土曜日の夜遅くから出発し、駅で仮眠を取っていた
(夜中のうちに最寄り駅まで行き、早朝登山開始、って事ね)
ふと数人の足音が聞こえ目を覚ました
目を開けると、朝もや(?)が掛かっていてよく見えないが
どうやらそろそろ夜明けらしい
「俺たちより後に来た人間か?出発するのかな」と思いながら再び目を閉じた
すると、また足音が近づいてくる
「あれ、駅に向かってくると言う事は下山して来たのか?」
とか考えつつも、まだ眠いので確認はしなかった

と、近くで眠っていた友人が父の名前を呼んだ
「どうした?」と答えると「足音、聞こえたか」と言う
「聞こえたよ」と言うと「誰も居ないんだよ、起きてみて見ろ」と言う
起きてみると、確かに誰も居ない
「俺たちより後に来た人間がもう出発したんだろう」と言うと
「終電で来たんだぞ、そんな筈は無いだろう」と言われた

「だったら下山して来たんだろう。駅に向かって来たグループも居たぞ」
と答えると友人は「いや、だから駅には誰も居ないんだよ」と言う
駅の周りには何も無い田舎で、見晴らしもいい
複数の人間が居たら目につく筈だと言う
「じゃああの足音は何だ?」「さぁ?」
考えても答えは出ない
「・・・俺たちも出発しようか。気をつけて行こう」

父と友人は、いつもより気を引き締めて山へ向かったそうだ

ちなみに、その山へはその後も何度か行ったようで
「また足音が聞こえた?」と訊ねると
「聞こえる日もあったよ」との答えでした

山で亡くなった人が、家に帰ろうとしているのかなあ
なんて思った話でした