友人の話。
それからもエレベーターが使用できず、非常階段を使う夜が度々あった。
第三者から見ればひどく不便だろうと思うのだが、その当事者は慣れてしまったのか
姉妹共々ケロッとした顔をしていた。
いつものように非常階段を昇っていたある夜。
七階に入る非常ドアを開けようとしていると、何か動く物が視界をかすめた。
不審者!?
ドキッとして動きのあった方、八階へ続く踊り場へ目をやった。
人ではなかった。何か黒い霞のような影が、そこにぼんやりと佇んでいる。
そこにも外灯が点いていたが、なぜかその姿をはっきり見ることが出来なかった。
じぃっと見ていると、右手に当たる箇所の影がゆっくりと持ち上がり、頭と思しき
付近でゆらゆらと定まった。まるで敬礼しているみたいに見えたという。
ひどく気味が悪かったが無視することも出来ず、「あ、どーも今晩は」などと適当に
挨拶してから屋内に入った。
その後も何度か敬礼してくる影に遭遇したが、その度々挨拶して逃げていた。
ちなみに姉の方は、この影を見たことはないそうだ。