灯りは八つに増えていた! これには、さすがに恐怖した。
八つの灯りは真ん中に隙間を空けるように、左に四つ、右に四つという形で横に並び、もう、すぐ目と鼻の先まで迫っていた。若者は走って逃げ出そうとしたが、向こうに感づかれるとまずいと思い、提灯を道の真ん中に置き、そっと脇の祠の陰に隠れた。
灯りは祠に近づいて来た。そこには人の姿は無く、ただ、灯火だけが八つ宙に浮いていた。
やがて、左四つ・右四つの灯火が、提灯を真ん中に挟むと、提灯の火はボッと消えた。
そして、宙に浮く八つの灯火の真ん中に、九つ目の灯火がポッと浮かんだかと思うと、九つの灯火は肩を並べて、道の向こうへ去っていったという。
祠の陰で念仏を唱えながら、その様子を見ていた若者は、灯火が去るや否や、隣村まで一気に駆け抜けた。その晩は、また灯火と鉢合わせるかも知れぬと怖れ、用が済んでも家には帰らず、親戚の家で夜を明かす事となったそうな。
「もし、こん時のオイの機転が無かったら… お前は生まれとらんやったかもなァ。」
そう言って老人は、食い入るように話を聞いていた孫を怖がらせてみせた。