気晴らしに、近くの山を歩いたその帰り道。

頬に蜘蛛の糸が触れた。
しばらく行くと、また、頬に蜘蛛の糸が触れた。
(雪迎えの季節にしては早いな)
そう思いながら歩いていると、視界の端を、黒と黄色の小さい何かが掠めた。
(蜂か?!)

咄嗟にしゃがんだ瞬間、とても忌々しげな誰かの声が大きく響いた。
「ちっ…!」

辺りには誰もいない。
ただ見上げれば、さっきまで俺の頭があった位置で、大きな女郎蜘蛛が1匹、ブランコのように揺れていた。