これ以上関わりたくないと思った爺さんは
番頭の身元をとりあえず引き受け、ある程度まとまった金を手渡し、
その代わり、今後一切旅館に近づかない、関わらないと云う念書を書かせ改めて縁を切ったと云う。

「私はな、いっそ自分の旅館に幽霊が出ると信じていた頃のほうが
 まだ気分が楽だったですな。
 もう半世紀も昔の事ですが、山宿していて一番恐ろしい経験やったねえ。」
…と、爺さんは話を結びました。

その、江戸川乱歩もびっくりの「深夜の徘徊者」が潜んでいた爺さんの山宿に是非一晩泊めてもらいたい、と願いましたが、残念ながら、
平成に入ってすぐ、近代的なホテルに建て替えてしまったそうです。