「嫌な写真があるんだ」
そんな言葉と共に、小型のデジタルカメラを受け取り、
液晶画面で、写真を順送りに見て行った。
山の同じ場所から、夕焼け空を数秒ずつずらして
撮影した写真のようだ。
ほんのわずかな差で、空の色は変わってしまう。
間違い探しのように、じっくり見ろと言われた。
4枚目がおかしい。
間近に写り込んだ尾根の上。
びっしりと人の行列が出来ている。
逆光で、顔までは分からない。
数秒の差で撮影された3枚目と5枚目には、
行列など写っていない。
他の写真は現像できたが、行列の写っている一枚だけ、
現像できなかったという。
自宅で印刷しようとしたが、うまく行かなかった。
数日して、彼から連絡が来た。
デジカメのメモリーカードから、画像を消去したが、
あの行列の一枚だけが、消去できないという。