知り合いの話。

裏山で草刈りをしていると、背後から「おーい」と呼びかけられた。
振り向いたが誰も居ない。そんなことが何度もくり返された。
初めは気味悪がっていた彼も腹を立て、ついには
「一体何だ?俺はここに居るぞ!」と大声で怒鳴り返した。

次の瞬間。

目の前に大きな黒い物体が、ズン!と地響きを立てて落ちてきた。
驚いて腰を抜かしかけたが、何とか踏み止まる。
それは古びた黒いボストンバッグだった。
裏山から誰かが、彼目掛けて投げ落としてきたらしい。
慌てて緑成す斜面に目をやったが、誰の姿も確認できなかった。

恐る恐るバッグを確認すると、中はまだ土がこびり付いている筍で一杯だ。
どの筍も瑞々しく、実に美味しそうに見える。
一寸の間悩み、結局全部貰って帰ることにした。

「みんな持って帰っちゃうぞ~。良いんだな~?」
一応裏山に向かって、正体不明の誰かに確認してみた。
返事らしきものは一切返ってこない。
贈り主の気が変わらぬ内に、さっさとそこを後にした。

新鮮な筍は、実に美味かったそうだ。
家族がすべての筍を食い尽くすのに、一週間ほどかかったという。
つづく