俺の親父は山が好きで小さい時良く連れてってもらってた。
その山仲間に、親父のアップグレード版というか
山が好きで好きでたまんないっておっちゃんが居た訳。
ボランティアのレンジャーみたいな事してて、山登って見回りしたり
山登り中迷っちゃった人見つけたら道教えてあげてたりした。
その人があろう事か、霧が酷かったとかで迷っちまった訳。



普段だったら尾根に出るとの事なんだけど、もう暮れかけててそれも危険。
取りあえず、ビバークする場所を探してるうちに、民家にぶつかった。
まだ谷じゃないのに一寸開けた場所で、どでかい昭和初期の旧家みたいだったそうだ。
何百回も上ってる山だからそれが「変」で有る事は気付いたし、
アリエネエとも思ったそうだが、季節は既に晩秋。



山の夜は軽装だとマジで寒い。
そんな訳で、軒を借りる為に玄関から声をかけたが誰も出て来ない。
しょうがないので勝手口に回ると、竈(20年近く前とは言っても昭和末期)には
熾が燃えてて暖かいご飯もあった。
火が有るって事はだれか居るはずだと声をかけてみたがやっぱり誰も居らず。



失礼して上がって座敷も見てみたがやっぱり家にはだれも居なかったらしい。
その時点でそれがどうやら「迷い家」であるらしい事は気付いたが
理性(常識)が全力で否定する。まあ当然といえば当然。



その後はなんの問題もなく麓につけたし、一晩迷ったって事で笑い話で終了。
一息ついてから、その夜の事を仲間に話していて、ふと気付くと胸ポケにカラフルな
和紙で折られた紙人形が入っていた。
おっちゃんは、「あーなにも貰わなかったから、持たせてくれたんだな~」
「でも役には立つ訳でもねえな」と思ったらしい。



ただまあ、その紙人形自体、(見せて貰ったけど可愛くて良くできてる)、
結構大事にしていて、お守り代わりに紐通して、車のバックミラーに掛けたりしてた。
その人形が関係あるのかどうか知らないが、
そのおっちゃん(つかもうじーちゃん)、何年か前に有った
東名かなんかの大玉突きに巻き込まれたうちの一台だが、
かすり傷一つ負わなかったそうだ。