幼馴染みの話。


彼の実家の山間には、ヨトウムシと呼ばれる虫がいるのだという。
いや、虫かどうかは誰にもわからないのだが、年寄りたちはそう呼ぶのだと。



これに憑かれると、夜眠れなくなるのだという。
ヨトウムシとは夜盗虫、つまり夜を盗む虫なのだそうだ。



身体は疲れているのに、どうしても眠れない。
症状が重くなると、一月二月は軽く眠れずに悶々と過ごすのだとか。
そのうち幻覚が見えたり、些細なことで感情が爆発し易くなり、甚だしい者は
気が触れてしまうこともあったと言われる。




「あんまし夜更かしすっと、ヨトウムシがお前に来んぞ!」
遅くまで起きていると、よくそう言って怒られたもんだよ。
彼は懐かしそうに言った。