子供の頃の話の、後日譚。
その飯場には、2匹の猫が同居していた。
父が山から拾ってきた猫で、名をシロとクロという。
そのまま、純白と漆黒の猫だった。
山中の仕事場で、2匹で弁当を貰いに来ていたのを
連れ帰ったのだという。
野良猫ではないようだが、近くで飼っていた人も見つからず、
飯場で飼っていた。
私は、この2匹の猫に遊んでもらいながら育った。
件の出来事があってから暫くしたある日、また私がぐるぐると回りだした。
「シロがチャンにかかった!いたいいたい!」
2度目だったので母も今度は驚かず、しっかりと聞いてみた。
「どこが痛いんかね!」
「ここ、ここ!」
左足を叩く私。
ちなみに、チャンとは小型弱力のトラバサミの地方名である。
父はこれを幾つか山中に掛けていた。
夕方、仕事師が猫を抱えて帰る。
怒って引っ掻くのでチャンを外すのに苦労しましたよ、と笑って語る。
左足の傷は浅く、すぐに治った。
その後飯場が変わるときに2匹の猫は貰われていったが、
クロが電車に轢かれて死ぬと、すぐにシロもどこかへ消えたそうだ