僕と兄さん 二人して 窓の外を見ているとですよ。
ずっと向こう 田んぼの畦道のあたり 何かおかしいものがいるのに気が付きました。
兄さん アレ なんだろうねえ? 「アレ? どれだ うあ」
兄さんも気が付いた あの 白い 案山子みたいなもの。
案山子みたいだけれど案山子じゃない 案山子はあんなに ぐねぐね動かない。


両手 振り回し 踊るみたいにグルグル ぐねぐね のたうつみたいに動く アレはいっ
たい何だろうねえ 兄さん もしかしてアレは くねく…


「なんだ ご近所の田野口さんちのじいさんじゃないか」
ええ?! 田野口さんちのおじいさん?!
「それ以外のなんに見えるって云うのだお前は。ああ ありゃウンカに巻かれてるな」


ウンカ?
「うん。ユスリカとか蚊柱とも云うなあ。 水辺とかによく発生する小羽虫の大群だよ 
道を歩いているとあんなふうに たかられる。 たかられたら いくら振り払っても離
れない 目鼻や口の中に入って大変なことになる ほら あの田野口さんみたいに 狂っ
たように手をぶんぶんやっても 離れない」




ああ なんだ。 てっきり 見て正体に気が付いたら気が狂ってしまうという例のアレ
かと思ったよ。