知り合いの話。
山道を歩いていると、後ろからザリッザリッと砂利を踏む音が聞こえてきた。
振り向くと、中学生くらいの女の子が一人、彼の後からついて来る。
ちょっと見たことのない、変わった格好をしていたらしい。
立ち止まった彼の真横まで来ると、ピタッと足を止める。
こんにちはと話し掛けてみたが、相手は口を開かない。


ちょっと不安になったが、それでもあれやこれやと話を振ってみた。
まったく反応がない。ただ彼のことを、じっと見つめているだけ。


そのうち、彼はあることに気がついて背筋が寒くなった。
別れの言葉を口にして、足早にそこを後にする。
ついて来ないで、という願いを踏みにじるように、足音は彼の後について来た。


走り出したくなる思いを必死で我慢し、振り向かずに歩を進める。
どのくらい歩き続けただろう。夕刻になる頃、足音は聞こえなくなった。
その後は何も変わったことはなく、平穏に下山できたという。


 参ったよ。あの娘、結構長いこと俺の横に居たんだけど……
 瞬きをしなかったんだ。ただの一度も。



それだけのことだけど、凄く怖かった。そう言って、彼は溜め息をついた。