友人の話。
去年の11月、まだ紅葉が残る晩秋の山を登山中、どこからともなく歌が聞こえてくる。
その歌はパーティの一人が大好きな曲だったので発信元を探すと、
崖の下ある小さな集落からだった。どうやら、秋祭りが行なわれているようだ。


ビノクラーで覗くと、寒空の中、タンクトップ一枚で熱唱する髭を生やした男と、
女の子ような金髪のギタリストが目に入った。
ふと横見ると、その人は身体が硬直し、涙がぽろぽろ止まらなくなっている。
彼が声をかけると、嗚咽しながら
「今日は24日。あの人は日本びいきだったから。ショウは続けられているんだ。天国で」
と声にならない声で呟いた。


結局、目的地を諦めここで幕営するはめになってしまったが、
誰一人として不満を感じることはなかったそうだ。