午前1時。
ひどい隙間風で眠れず、小屋の外で吹き荒れる風の音を
聞き続けていた。
風はひたすら吹き続けていた。
無人の冬季小屋だ。
屋根があり、壁があり、床があった。
全体、ひどく軋んだが、ここでは充分に贅沢な宿だ。
もうひとつ、この小屋にいるのが自分たちだけでないと
思わせる何かがあった。
小屋の薄暗い一角に目を向けた。


その一角だけ、木の壁にびっしり結露している。
ぞくっときた。
ぬくもりなど、もう感じられない。
目は、いよいよ冴えてくる。
隙間風は相変わらずだ。
やがて、壁の結露は広がり、人の形になった。
連れは呑気に寝息を立てていたが、突然、寝言を言いはじめた。
南無阿弥陀仏


こいつのどこから、こんな声が出てくるかと思えるような
普段からは想像できない力強い声で念仏を3回繰り返し、
静かになった。
俺は朝まで風の音を聞き続け、壁の結露を見続けた。