知り合いの話。
仕事で東南アジアへ行った時のこと。
赴任先の街は樹木生い茂った密林に面しており、大戦中はその森から山にかけて、
日本軍が激しい戦闘を繰り広げた過去がある。
仲良くなった現地の同僚が、食事に招待してくれた。
香草がかなりきつかったみたいだが、それでも料理は美味しかったという。
食事後に大人同士で歓談していた。
お互い片言の英語で会話していると、いきなり耳に飛び込んできた日本語がある。
グンソウドノ、グンソウドノ
微妙に発音がおかしかったが、確かにそう言っている。
見れば、家の子供たちがそう言いながら追いかけっこをしていた。
怪訝に思い同僚に聞くと、あれはお化けごっこをしているのだという。
山近くの森の中で、夜になると「グンソウドノ」と叫ぶような声が聞こえるのだが、
現地ではそれをお化けの声としているのだそうだ。
その場に居合わせた者は誰一人、それが日本語だと気がついていなかった。
現地組は他にも、こんな叫びが聞かれると教えてくれた。
「オイテカナイデ」「ミズクダサイ」
彼は強引に話題を変え、それ以上その声について触れなかったという。