えー、この一週間、ちょっと洒落にならない目に会っていたものでして。
いや、他の人から見たら大した事じゃないのかもしれませんが。
小ネタとは言え、マジで夜、碌に眠れなかった。(泣)
変に怖い話、奇妙な話をよく知っているもので、どうしても悪い方に連想してしまうんですよねぇ。


怪談を聞き集めるのは好きなのですが、自分がその体験者になってしまうと、はっきり言ってそれ所ではなくなることを実感いたしました。
怖い話なんてものじゃなくて、自分の勘違い だと思いたいよなぁ。
今週は何も起こらなかったので、解決はしたのでしょう 多分。
えらく疲れました。


私の体験した話。
ある資格試験を受けた帰り道、車で山中を走っていた時のことだ。
考え事をしていたせいか、どうも曲がる道を一本間違えたらしい。
カーナビが自動で家への経路再検索をかけ始める。
やがて表示された道筋は、いまだ通ったことのないものだった。
面白い、新しいルートの開拓と行こうか。
何気なくそう考えて、指示されたままに走り出す。


道はどんどんと深い山奥へ進んでいく。
妙だな、どんなに遠回りしても、もうそろそろ町に着く頃なんだが。
到着予定時刻を確認すると、家まで二時間と表示されていた。
道を間違えた時点では、家まで三十分足らずだったはず。
そこから二十分しか走っていないというのに、一体どういう道のりだ?


やがて、道は舗装もされていない狭い野道に繋がる。
慌ててカーナビ画面を確認すると、おかしなことに気がついた。
画面地図に表示されている道は、あくまでも舗装されているところまでだった。
それなのに、ルートの太いラインだけは、そこからもしっかりと伸びている。
地図登録もされていない細い道を、どうやって検索したというのだ?


その時点で、到着予定時刻は四時間にまで伸びていた。
気持ちが悪かったが、勢いでそのまま走ってみた。
真っ暗な山道を登りきった所で、ルートの表示は終っていた。
ナビは再検索に入ったまま、応答が帰ってこなくなってしまう。
到着予定時刻は、すでに八時間を超えていた。


八時間?そんな馬鹿な!と思い車を停めた。
もう一度最初からルートを探そうとしたが、カーナビの操作が効かない。
ここはどこだろう?道脇を見回す私の目に小さな影が映った。
明かりはヘッドライトしかなかったが、それでも微かに見えた。
車を囲む草むらの間に、沢山の黒い何かが覗いている。


目を凝らしているうち、唐突に理解が訪れた。
墓石だ。朽ちかけている。
いつの間にか、山奥の無縁墓地に迷い込んでいたのだ。
いきなり悪寒に襲われて、パニックに陥りかけた。
窓を閉め、車を矢鱈滅法に走らせた。
どこをどう走ったのかは、よく憶えていない。
気がつくと、私は薄暗い外灯の燈った、神社の側に来ていた。


慌てて車を停めると、ナビの電源を入れ直す。
すんなりと検索が始まり、家まで二十五分と表示された。
ルートに従い走ると、直ぐに見覚えのある国道に出る。
その後は何も起こらず、無事に帰宅することができた。
道を間違えてから、二時間近くが経過していた。


あの間、自分は一体どこを走っていたのか、気になって仕方がない。


その日の夜。
寝ていると、いきなりガラリッ!と音がした。
驚いて目を覚ますと、寝室の網戸が引き開けられていた。
とっさに身を起こし駆け寄ったが、近くには誰もいない。
窓の下には砂利が惹かれていて、音も立てず歩き去るのは不可能だ。
一体誰が開けたんだ?
気になってしまい、その夜は碌に眠れなかった。


翌朝、眠い目を擦りながら歯磨きをしていた。
髭を剃ろうと、電動剃刀を探す。
すると背後から、洗面台の上に剃刀が押し出された。
私の肘のすぐ下に、黒くて細い、人の手のようなものが一瞬見えた。
弾かれたように真後ろを振り向いたが、そこには何も見当たらなかった。


その日の仕事は、山中で井戸給水の配管修理をするものだった。
二人で組んで仕事をしていたのだが、相棒は途中で材料を買出しに出かけた。
しばらくは一人きりだ。
のんびりとスコップを使っていると、いきなり肩を叩かれた。
誰?振り向いてみたが、背後には棚田が見えるだけだった。
急に朝の出来事を思い出し、仕事どころではなくなった。


やがて帰ってきた相棒は、仕事が進んでいないと文句をつけた。
ホッとしたが、少し複雑な気分だった。


その日、冴えない気分で帰宅すると、猫が玄関前で長くなっていた。
家で飼っているわけではないが、居付いている猫だ。
いつもは餌にありつこうと甘え声を上げる猫なのに、その日の反応は違っていた。
じっと私を見ている。警戒しているかのように。
側まで近づくと、全身の毛を逆立て、次の瞬間逃げ出した。
何もしていないのに


私は少し傷心したが、気を取り直し飼い犬の所へ向かった。
散歩の当番なのだ。
犬は私を認め、尻尾を振り跳ね回ってまくって喜んだ。
まったく散歩に出る前の犬というのは、嬉しくて仕方がないらしい。
と、いきなり犬が跳ね回るのを止めた。
そればかりか、近づいた私に向かい、牙を少し剥いて唸り声を上げ始めた。
ショックだ、何で犬まで?


一瞬情けなくなったが、すぐに気がつく。
犬は私ではなく、私のすぐ背後に向かって唸っていた。
後ろに誰かいる!?
身動きできなくなった。誰かなどいる筈がないのだ。
それなのに、確かに犬は何かを認め、牙を剥いている。
膠着状態が続いたが、しばらくすると犬は唸るのを止め、また尻尾を振り回し始めた。


早くしろと急かすように、一声鳴く。
恐る恐る振り向いたが、やはり後ろには何もいなかった。
それからも時々、犬は私の背後に向かい低く唸っていた。


昨晩のこともあったので、その日は雨戸を閉めて寝ることにした。
そうは言ってもさすがに暑いので、寝る前に少し冷房をかけておいた。
内側のサッシ窓にもしっかりと鍵をかける。
少し神経質になっていたかもしれない。
やはり、夜半過ぎに目が覚めた。
小さいが、やはりガラリという音が聞こえたのだ。


窓を確かめると、サッシ窓も雨戸もしっかりと鍵が下りたままだった。
しかし、その間に挟まれた網戸だけが、半分ほど引き開けられていた。
無言で網戸を戻すと、つっかえ棒を強引に噛ましてから、寝た。