知り合いの話。
三十年程前の、彼のお爺さんが猟師をしていた時のことだ。
冬期で食料が乏しくなっていた頃、折りよく鹿を見つけ撃ったのだという。
鹿はよろめきながらも藪の中へ逃げ込んだ。
後を追って藪に踏み込んだ彼が見たものは、雪の上に置かれた鹿の首だけだった。
胴体の方はどこにも見当たらず、血の匂いがあたりに充満していた。 いつもならすぐ後をついてくる猟犬が、藪の外で恐ろしげに鼻を鳴らしている。まずい!
これは不可侵の領域で狩りをしちまったな、と悟ってすぐに退散したそうだ。
今まで山の神さまには獲物を何回か取られたけれど、あれが一番怖かったな。
まぁ山で獲れる物は、本来が山の神さまの物だから仕方がないか。
お爺さんはそう言って屈託無く笑っていた。
そのお爺さんも、最後は山の中で首を吊っていた。
神さまに持っていかれた
三十年程前の、彼のお爺さんが猟師をしていた時のことだ。
冬期で食料が乏しくなっていた頃、折りよく鹿を見つけ撃ったのだという。
鹿はよろめきながらも藪の中へ逃げ込んだ。
後を追って藪に踏み込んだ彼が見たものは、雪の上に置かれた鹿の首だけだった。
胴体の方はどこにも見当たらず、血の匂いがあたりに充満していた。 いつもならすぐ後をついてくる猟犬が、藪の外で恐ろしげに鼻を鳴らしている。まずい!
これは不可侵の領域で狩りをしちまったな、と悟ってすぐに退散したそうだ。
今まで山の神さまには獲物を何回か取られたけれど、あれが一番怖かったな。
まぁ山で獲れる物は、本来が山の神さまの物だから仕方がないか。
お爺さんはそう言って屈託無く笑っていた。
そのお爺さんも、最後は山の中で首を吊っていた。
神さまに持っていかれた