<帰去来の辞>

   ――― 如来しつつ如去するもの


   この話、「鐘声裏に七条を披 (き) る」 の逆ではあるが、

   余りにも取って付けたような冗長な話ではなはだ面白くない。


   一方で、鐘の声を聞けば何故一斉に七条を着るのだ、と詰め寄り、

   今一方で、未だ鐘の声も聞かず鼓の音も響かないのに、食鉢を掲げて

   いったい何処に去ろうと言うのか、と詰る。


   来々去するにいとまがないのが人間だとは言え、

   また、日常底に来去の商量するのは禅家の家風なのだろうけれど、

   それも程度の問題で、まるで寝た子を起こすように親切に過ぎれば、

   茶番を越えて蛇足というものだ。