<無用の長物>


   すこし傲慢で皮肉な言い方でいえば、

   宗教なんてものは、「あらずもがなゝ宗教」 と言いますか、

   それを忘れているくらいの方が幸せと言うか、元気なのです。

   したがって、ここでの記述や論説も元気で幸せな人から見れば、

   「いわずもがなゝ記述」 「いわずもがなゝ言説」 となるのです。


    
   6・54  私を理解する読者は、私の書物を通り抜け、その上に立ち、
    
   それを見下ろす高みに達した時、ついにその無意味な事を悟るに至る。
 
   まさにかかる方便によって、私の書物は解明を行おうとする。

     
   読者は、言うならば、梯子を登りきったのち、

   それを投げ捨てなければならない。
 
     
   読者は、この書物を乗り越えなければならない。

   その時彼は、世界を正しく見るのだ。

                          
   ( ヴィトゲンシュタイン 『論考』 参照 )