<洞山五位頌>


   正中偏       
   三更初夜月明前     三更初夜 月明の前
   莫怪相逢不相識     怪しむ莫れ 相逢うて相識らざるを
   隠隠猶懐舊日妍     隠々として猶ほ旧日の妍(けん)を懐う   

   
   偏中正
   失暁老婆逢古鏡     失暁の老婆 古鏡に逢う
   分明覿面別無真     分明覿面 別に真なし
   休更迷頭還認影     更に頭に迷うて還って影を認むること休れ


   正中来
   無中有路隔塵埃     無中に路有り 塵埃を隔つ
   但能不觸當今諱     但能く当今の諱(いみな)に触れず
   也勝前朝断舌才     也た前朝の断舌の才に勝れり


   偏中至
   両刃交鋒不用避     両刃鋒を交えて避くるを用いず
   好手猶如火裏蓮     好手猶ほ火裏の蓮の如し
   宛然自有沖天氣     宛然として自ずから沖天の気あり


   兼中到    
   不堕有無誰敢和     有無に堕ちず 誰か敢て和せん
   人人盡欲出常流     人々尽く常流を出でんと欲す
   折合還帰炭裏坐     折合還帰して炭裏に坐す