<鳥居みゆき論>

   ――― 狂気と笑いのインデックス 


   芸人の部分を差っ引いても、この女芸人は、

   彼女自身が言うように 「アブい女」 である。

   危険なのではない、「危ない」 のである。


   これが、彼女の芸の基本、

   断絶の芸風、禁断の芸風の根幹となっている。

   いわゆる、意味不明、意思不通のキワモノ芸人である。

   したがって、彼女の芸自体は稚拙なものであり、
   
   そんなに作り込まれたり、練り上げられたものではない。

   
   むしろ、それをしてしまうと、

   つまり、洗練された芸風 (表現形式) に仕立て上げると、

   狗肉の策ともいえる、その場限りの一発芸の魅力がなくなり、

   自らジレンマに陥るという代物である。


   基本は、「ノリ」 と芸人のタブーである 「すべり」 であり、

   同時に、すべりまで食ってしまう 「禁断症状」 である。


   「ナベアツ」 辺りまでは、何とか芸人と客席との交流、

   その因果論的な脈絡は付いていた。

   3と3の倍数で 「アホになります」 と先に弁解しておくことで、

   客席との断絶を回避していたのである。


   しかし、「小島よしお」 あたりから事情が違ってきた。

   時流のKYブームやお馬鹿ブームに乗ったとも言えるが、

   空気の読めない症候群を地で演じたのである。


   幸か不幸か、このあたりからピン芸人の世界が一変した。

   案の定、埋もれていた鳥居みゆきが顔を出した。

   ここからは、

   客席無視、観客無視、客観無視の主観的マイワールドの開花、

   時代的様相にリンクするパラレルワールドの全開となり、

   決して、交流し流通し合うことを意図しない、

   オタク的文化の共時性と共場性の共鳴となっている。


  
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