書庫: 龍のすみか 所収
   


   従来不失の当処が、随分と奇妙な処に出て来てしまった。

   
   此処では、「殺仏殺祖の境涯」 が 「従来不失の当処」 だ、

   と言うのである。


   今此処が、従来不失 (不生不滅/久遠実成) の当処であり、

   他に追随も追尋も許さぬ殺仏殺祖 (非聖非凡/非心非仏) の境涯だ、

   と。


   
   「殺仏殺祖の境涯」 が、「従来不失の当処」 であり、

    ≪真地の風光≫ (真底/如来地) である。



   いわゆる、殺仏殺祖の境涯が、

   ≪生死のなかに仏なければ生死に惑わず≫

   と、証拠されるのであり、

   
   ≪凡情脱落し、聖意皆空ず≫ と言われる

   非聖非凡、非心非仏の当処 (無心の現在) に落着するのである。




   頌う

   鞭索 (べんさく) 人牛 尽く空に属す

   碧天寥廓 (りょうかく) として信通じ難し

   紅炉焔上 争 (いか) でか雪を容 (い) れん

   此 (ここ) に到って方 (まさ) に能く祖宗に合 (かな) う



   和する

   慚愧す衆生界已 (すで) に空ず

   箇中の消息若為 (いかん) が通ぜん

   後に来たる者無く前に去 (ゆ) くもの無し

   未審 (いぶかし) 誰に憑 (よ) ってか此の宗を継がん


   
            (廓庵 『十牛図』 「人牛倶忘」 参照)