書庫: 龍のすみか 所収
  


   ≪従来失せず 何ぞ追尋を用いん≫


   従来不失、何用追尋。     従来失せず、何ぞ追尋を用いん。

   由背覚以成疎、         背覚に由って以て疎と成り、

   在向塵而遂失。         向塵に在って遂に失す。

   家山漸遠、岐路俄差。     家山漸(ますま)す遠く、岐路俄(にわ)かに差う。

   得失熾然、是非蜂起。     得失熾然(しねん)として、是非蜂起す。


                         ( 廓庵十牛図 「尋牛序一」 より )



   
   場が、重力的な非平衡 (平衡の破綻) な場で在ったり、

   局所的な非対称 (対称性非保存) な場で在ったり、

   量子力学などで言われる 「四つの力」 の不統一な場で在れば、

   我々は、今此処に、

   <このようには存在していないだろう> と言った。


   この思いに、今も変わりはない。

   もし、我々が重力非平衡な場に在れば、とうに押し潰されているか、

   空中高く吸い出されているに違いなく、その収束 (収斂) する力と

   発散 (拡散) する力に翻弄されて、足の踏み場もない事態となるだろう。


   また、場が非対称性を開示した 「対称性非保存」 な現場なら、

   我々は、正念 (正覚) を失うばかりか、意識的な混乱の極みとなって

   今此処に放り出されるに違いない。


   また、仮に「四つの力」が、言われるように不統一のままであるなら、

   その言動 (言及) はおろか、一挙手一投足もままならないだろう。


   
   此処には、何かしら多大な <顚倒妄想> が支配し、

   致命的な <本末転倒> が跋扈しているように思えてならない。