書庫: 龍のすみか 所収
   


   オット、危ない、危ない。

   うっかり、口をすべらしてしまった。

   (舌頭 地に堕つ!!)

   迂闊に物は言うもんじゃない。


   
   <広げれば天地に弥綸し、収めれば糸髪も立せず>

   と言うけれど、

   広げても散ぜず、収めても集まらず、

   出るとも出でず、入るとも入らず。

   
   「・・・口を開けば即ち失し、

   口を閉ずれば又た喪す。

   開かず閉じざるも、十万八千」。  

    
   (むむむぅーッ)

   ・・・ 何とも言いようがない。  

  


   『無門関』 三十七 「庭前柏樹」 の頌に曰く、

   
   言、事を展 (の) ぶること無く、

   語、機に投ぜず。

   言を承 (う) くるものは喪 (そう) し、

   句に滞 (とどこお) るものは迷う。


   
   言葉で説明できやせぬ、

   話せば機微に触れられぬ。

   言葉を聞けば見失い、

   句にくっついて道迷う。


    (岩波文庫 『無門関』 西村恵信 訳)