≪愛のフロント窟 所収
  


   さくら花

   汝、何処より来たり

   何処に向かってか去る。
  


   ――― 週末、友人と半日「嵐山」に遊んだ。

   と言っても、病の再発を得て自宅にふさぎがちの友人を

   おもてに連れ出しただけなのだが ・・・


  
   すでに花の盛りを過ぎた初老の男二人が、

   同じように花の盛りをすぎた名残のさくらを

   横目に見ながら飯を食っただけの話だが、

   お互いに何を語るとも無く、世間話の内に

   越し方行く末をながめていると言った風情で

   これはこれで <不断妄 不求真> な一日

   だったように思う。


   ――― 「破鏡重ねて照さず、落花は枝に上り難し」  (華厳禅師)

  
   
   ・・・ と、言えども、

   尚、 「この一片を用いるに天下に普し」。