平成18年7月17日(月)       ≪煩悩のかさぶた≫ 所収



   即ち此の見聞は、見聞に非ず、
   
   余の声色の君に呈すべきなし。
   
   箇の中若し了せば全く無事、
   
   体用妨ること無し、分と不分とを。  (三平義忠)



   石女の舞い

   今ここに脱体現成し来たる者、是れ、何者。
   
   万里一条の鉄を破砕して、今再び生まれ来たる者
   
   「是れ、何者」。
   
   是れ、再生の主か、はたまた再誕の徒か
   
   汝、「無主」と為すか、はたまた「郎主」(牢主)と為すか
   
   未だ「有量の義」と為すは、これ「虚仮」にして、
   
   既に「無量(没量)の人」なれば、さながらに脱体現成せん。
   
   これ、「有為」にもあらず「無為」にもあらず、
   
   将に仏縁にして、有為人天のひとかけらもありゃしない。
   
   満天に目鼻を着け、大道に呼吸(いき)するは、人我の本懐。
  
   定めて、手の舞い足の踏む処となるべし。
  
   しかして、こ奴、何者。
  
   行かんとしてすなわち行き、止まんと欲してすなわち止む。
  
   行事するに、一個の文言も須(もち)いず、
   
   為すに為すところなく、行うに行うところなし。
   
   さても自救他救(ジグダグ)するに難なく、
   
   余りにも自明にして、有難味も何もありゃしない。
   
   是の如き不逞のやから、他に比すべき値打ちもない。
   
   これ、転々して不転の主、生死していまだ熄まず。