ロッジで体験した恐怖の夜 | 創作怪談 zero

創作怪談 zero

三度の飯と怪談が好き。
ここでは怪談の創作にチャレンジします。
拙い文章ですが気に入って頂けたら嬉しいです。
そして語り継いで頂けたら幸いです。

 

ろ

 

それはもう20年も前の事。

私達夫婦は1歳になる娘を連れ、お盆休みを利用して主人の職場の家族二組と一緒に

山間のキャンプ場にロッジを借り、一泊二日の旅行に来ていました。

夜になり皆でバーベキューを楽しんだ後、

皆は車に乗り花火をする為、少し離れたキャンプファイヤーサイトへ出かけて行きました。

皆が花火をするのに離れたキャンプファイヤーサイトまで行ったのは

ロッジの前での花火が禁止されていたからだ。

私はといえば娘がまだ1歳で既に眠そうにしているので花火には行かず、

娘と二人でロッジに残った。

先程まで眠くても眠れないのか、グズっていた娘もやっと腕の中ですやすやと

気持ち良さそうに眠り始めた。

そしてその時、ふと私はいつからしていたのか分からない奇妙な音がしている事に気がついた。

ギィーッ… ギィーッ…

それはまるで木が軋むような音…

(何の音?)

私はピタリと動きを止め、その音に聞き耳を立てる。

ギィーッ… ギィーッ…

それは小さく、しかし規則的に鳴り続けている。

ふと入口のドアを見るが、ドアは確実に閉まっている。

子供達が快適に寝られる様にエアコンをつける時、窓は全部閉めたので

窓やドアの扉が風で動くはずはない…。

ではこの音は何?

(まるでノコギリで木を切るような音…)

そう考えて私は戦慄した。

この真っ暗な山林の中、ノコギリで木を切ってるヤツがいる?!

一つ一つの区画を広く取ったロッジの周りには多くの木々が立ち並んでいる。

隣のロッジの音は聞こえるほど近くは無いし、夕方に子供達と散歩をした時に

前を歩いたが、その日、両隣のロッジの利用者は無さそうだった。

私は身体をこわばらせ、耳をすませる。

ギィーッ… ギィーッ…

娘と二人きりの静かなロッジの中に、その不気味な音だけが響いている。

私はこの音が一体どこから聞こえてくるのか、何者が立てる音なのかを確かめなければ、

いざという時身を守れない。

そう思い娘を抱いたまま足音を忍ばせ、音のなる場所を探そうと隣の部屋に歩いて行った。

(一階じゃ無い。)

私はそう思い部屋中央にある階段の前に立った。

そして耳を済ますと確かにその音は二階から聞こえてくるようだ。 

二階を確かめよう。私は娘をそっと布団に寝かせようとするが娘は目を覚ましそうだ。

ここで今娘に起きて泣かれては困る。

なぜなら外にいるその怪しい何者かに自分達の居場所を知られてはならないと感じたからだ。

私は娘を起こさぬ様、抱いたまま息を殺し階段を一つそっと上った。

ギシッ…と踏みしめる音がする。

私は更に注意して次の一段を踏みしめる。

一段、一段、

私は、その緊張に額に汗を滲ませた。

ギィーッ… ギィーッ…

不気味な音は大きくなっていく。

私はやっと階段を上り切ると息を殺し二階の部屋へそっと入った。

ギィーッ… ギィーッ…

その音は更に大きくなり私は

(ここだ)と確信した。

恐怖で背中が凍りつく。

もはやその音は林の木を切ると言うより、このロッジを外から切っているかの様だった。

それは明らかに生きてる人間では無い何者か、それか全くの狂人の仕業でしかあり得ない…。

私は娘をギュッと抱き

(お願い!起きないで。)そう願いながら、 

ジリジリと窓へ近寄りながらカーテンへそっと手を伸ばした。と、その時。

バタンッ!!

とドアの音がして花火に行っていた皆が帰って来た.。

「ただいまぁ!楽しかった♪」

「お母さーん、ジュース飲んでいい?」

皆の声が一階の部屋から聞こえて来た。

一瞬、ドアの音に驚いてビクッとしたが、それまでの緊張感が一気に解け安堵に変わった。

気が付くとあの怪しい音は、もうしていない。

私は娘を抱いて一階の部屋へと降りていった。一階は花火から帰って来た皆で賑わっている。

 

「お帰り。」そう言う私を見て旦那は 

「え?なんかあった?」と聞いてきた。

どうやら顔色が真っ青になっていたらしい。

私が先程まで外から変な音がしていた事を告げると旦那は懐中電灯を持って

ロッジの周りを見回りに出た。

戻って来た旦那は何も異常は無かったと言う。

(あの怪しい音を立てていたモノは逃げたのか?それとも消えたのだろうか?)

暫くして皆は寝支度を済ませるとそれぞれ部屋に行き再び静寂が訪れた。

すーっ、すーっという旦那と娘の静かな寝息を聞きながら私はまんじりともせず朝を迎えた。

 

いつしか外は明るくなり、カーテンの横から

一筋の光が差し込んで来た。

私はその光にやっと本当の意味で安堵して、

まだ寝ている旦那と娘を起こさぬ様に、そっとドアを開け外を見た。

そこは夏とは思えぬひんやりした冷気と全てを真っ白に包み込む様な霧が立ち込めていた。

そして日も高くなり始め私達はロッジを後にした。

帰り際、私がゴミ袋を少し離れたゴミ捨て場に持って行き、ふと脇に目を遣ると

そこに真っ茶色に錆び付いたノコギリが置かれていた。

(ノコギリ…)私はそれを見て一瞬昨夜の悪夢の様な出来事を思いだし身震いした。

 

本当に昨夜のあの怪しい音は一体何だったのか?キャンプ場を出て山道を走り帰る車中、

私は窓の外を流れる山の木々を見ながら思いを馳せたのだった。