• 余りにも、一方的な断定だ。その攻撃は、「無差別」ではない。ー【朝日社説】ポケベル爆弾 緊張高める無差別攻撃 【毎日社説】レバノンで連日の爆発 民間人殺傷は許されない

 「無差別攻撃」。中々、インパクトのある言葉だな。

  典型的な「無差別攻撃」は、第1次大戦下にドイツ帝国が宣言した「無制限潜水艦作戦」がそれだろう。潜水艦と言うモノは、水上艦に比べて索敵能力が低く、最大の利点は隠密性・秘匿性に在る。故に、発見したフネが軍艦なのか民間船舶なのか、敵国のモノか中立国のモノか、等を識別するのには手間も時間もかかり、その分自艦を危機に曝すことになる。
 更には、艦内容積が極限まで切り詰められているので、捕虜や虜囚を監禁するってのが至難だ。従って、水上艦ならばやるような、「敵国の船舶を拿捕して、乗員乗客は虜囚とし、後に中立国で解放する」なんて芸当は、そうは出来ない。
 そこで、在る海域区域に対して、「ここに入って来るフネは、片っ端から攻撃して沈めるぞ。」と宣言するのが、「無制限潜水艦作戦」。国際的には非難囂々の戦術(*1)だが、「片っ端から沈めるぞ!」だから、正に「無差別攻撃だろう。

 次いで思い出されるのは、第二次大戦下の米英軍による戦略爆撃(*2)である。軍人・軍隊と軍事施設ではなく、民間人と民間施設を爆撃することで、国としての生産力・経済力・国力を削ぎ、戦争に勝つ」戦略爆撃、「都市や工場、住宅地を狙った爆撃」であるから、「無差別とは言い難い・・・・とは、一寸、「口が裂けても言えない」な。 
 大体、都市とか住宅地ったら、結構な大きさの目標であるし、此処に特に核兵器なんか使用するとなったら、「空中起爆させて、威力範囲を広げる」なんて事もするから、「精密」とも「狙っている」とも程遠い。やはり、「無差別攻撃」と言われるべきだろう。
 
 言い替えるならば、成人男性や軍隊・軍人を「狙う」のでは無く、女子供や民間人を「お構いなしに攻撃する」から、「無差別攻撃」と呼ばれる/言われるべきなのであり、極端に言えば、「女子供や民間人だけを精密に狙う攻撃」もまた、その非道と卑劣さを非難批判されるべきである。その精密さが高いほど、「無差別攻撃」乃至それ以上の強い言葉で非難すべきであろう。

 左様に考えるならば・・・下掲社説で朝日新聞社説が「無差別攻撃」とし、毎日社説が「許されぬ民間人殺傷」としている、今次の「イスラエルの手による」とされる「ポケベル爆弾攻撃」に対する批判非難は、「素直に聞けない」とか「違和感がある」程度のレベルでは無い、と、私(ZERO)には思われるのだが、如何だろうか。

  • <注記>
  • (*1) World War 1って、比較的手軽に第1次大戦を開戦から終戦まで再現・再演できるゲームでは、この「無制限潜水艦作戦」故に、ドイツ帝国軍プレイヤーに75勝利得点だかの「ペナルティー」を与えていた。因みにこの「無制限潜水艦作戦によるペナルティー」を、ドイツ帝国軍プレイヤーであれ誰であれ、回避も低減も出来ない。ドイツ帝国軍プレイヤーは、その分余計に勝利得点を稼がないと、勝てない。 
  •  
  • (*2) 大東亜戦争(太平洋戦線)で戦略爆撃を仕掛けたのは、米軍の主としてB-29だが、欧州戦線では英軍も、主として夜間爆撃で、結構な爆弾量をドイツに対して投下している。 


 

  • (1)【朝日社説】ポケベル爆弾 緊張高める無差別攻撃 

ポケベル爆弾 緊張高める無差別攻撃

 

https://www.asahi.com/articles/DA3S16040629.html?iref=pc_rensai_long_16_article

 

 

社説

 

2024年9月22日 5時00分

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写真・図版

9月19日、レバノンでポケベルの爆発によって死亡したイスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーの葬儀に出席する人々=ロイター

 

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 市民が持ち歩く民生品が突如、兵器と化して一斉に爆発し、市民に襲いかかる。死傷者は数千人に及ぶ。まぎれもない無差別攻撃であり、国際人道法に背く卑劣な犯罪だ。

 

 イスラエルの隣国レバノンで、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーらが携帯する通信機器のポケットベルが同時多発的に爆発した。翌日にもトランシーバー型の無線機が爆発し、死者は合わせて37人、負傷者は3千人を超えた。

 

 ヒズボラは軍事部門とは別に民生部門を有し、レバノンの国政選挙に参加する政党でもある。通信機器を持つ者が戦闘員とは限らない。

 

 いずれの機器も手に持って顔の近くで操作するタイプだけに、負傷者の多くが指や視力を失った。爆発は市場やレストランなどでも起き、周囲にいた子どもを含む大勢の一般市民にも被害が及んだ。痛ましい事態だ。

 

 ポケベルには台湾の、トランシーバーには日本の企業の表記があったが、実際にこれらのメーカーが製造したかどうかは定かではない。

 

 いずれにせよ、今や原材料の調達から消費者に製品が届くまで多くの国境を越える時代である。民生品の武器化は地域を問わず社会を不安にするだけではない。企業活動や国際物流の混乱や不信も招きかねない。爆発物が埋め込まれた過程などを関係の国・地域は連携して解明し、再発防止を図る必要がある。

 

 懸念されるのは、中東で戦火がさらに広がることだ。

 

 イスラエルは関与について沈黙しているが、ヒズボラはイスラエルによる宣戦布告だとして報復を明言した。

 

 両者は日常的に国境をまたいで互いを攻撃しており、規模の拡大に歯止めがかからなくなる恐れがある。ヒズボラの後ろ盾のイランも態度を硬化させている。

 

 武力の応酬が激化したのは、パレスチナ自治区ガザで昨年10月、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってからだ。ヒズボラはハマス支援を表明し、ガザの戦火がやまない限り、レバノン国境の緊張も解消されまい。

 

 だが、イスラエルのネタニヤフ政権は閣議でガザでの戦争の目的に「レバノン国境の安全確保」を加えた。数時間後にポケベル爆発があり、その後もレバノン領内への空爆を続けている。まるで戦線拡大を企図するかのようだ。

 

 中東の情勢悪化もいとわず強硬路線に突き進むネタニヤフ政権を抑制し、ガザでの停戦を実現させるため、国際社会は外交的な圧力を強める必要がある。

  • (2)【毎日社説】レバノンで連日の爆発 民間人殺傷は許されない

レバノンで連日の爆発 民間人殺傷は許されない

 

https://mainichi.jp/articles/20240921/ddm/005/070/099000c

 

 

注目の連載

オピニオン

 

朝刊政治面

毎日新聞

2024/9/21 東京朝刊

840文字

負傷者を運ぶ救急隊員ら=レバノン南部で17日、AP

 街中のにぎわいを爆音が引き裂き、叫び声が響いた。血だらけの負傷者が搬送され、野戦病院が設置される。さながら地獄絵だ。

 

 レバノン各地で2日続けて、多数のポケットベルや無線機(トランシーバー)が爆発した。子どもを含む計30人以上が死亡し、負傷者は3000人を上回った。

 

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 いずれの機器も、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーが使用していた。暗号メッセージなどを受信した直後に爆発したという。

 

 ヒズボラは今年に入り、ポケベルやトランシーバーを使用するようメンバーに命じていた。携帯電話は盗聴される危険や、位置情報が暗殺の実行に利用される可能性があるためだ。

 

 

 指導者ナスララ師は一連の爆発について、イスラエルによる「宣戦布告だ」と述べ、「厳しく報復し、正当に処罰する」と宣言した。イスラエル政府はコメントを出していない。

 

 国際人道法は戦闘員と非戦闘員を区別し、攻撃対象を戦闘員や軍事施設に限定するよう定める。

 

 国連のレバノン特別調整官は声明で子どもが犠牲になった点に触れ、「市民を標的にしてはならない」と強調した。民間人の殺傷は許されない。

 

  • (3)空爆や砲撃より、被害局限出来ように。

 上掲朝日&毎日社説にもある通り、今回「イスラエルの手による攻撃」に使われたのは、「イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーらが携帯する通信機器のポケットベル」(所謂ポケベル)に仕掛けられた爆弾である。「ポケベルが爆発する攻撃」であるが故に、「無差別攻撃」とか「許されぬ民間人殺傷」とか、非難批判されている、訳である。
 
 だ・が・・・本当に、そうだろうか?
 「ポケベル爆弾による攻撃」は、「無差別攻撃」で「許されぬ民間人殺傷」であろうか?

 或いは、「それは本当に、”イスラエルによる攻撃”であろうか?」って事すら、疑義及び検証の対象から外すべきではないだろう。

 先ず、「それは本当に、”イスラエルによる攻撃”であろうか?」については、「妥当な推論」と言うことが出来そうではある。何故ならば、今次攻撃の目標となったのが「イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバー」であることに加えて、本攻撃を実施する上で、

① 既存市販のポケベル内部に、十分な殺傷力の在る爆弾を仕掛ける(*1)のに必要な高度な技術と量産体制を有する。


② 「ポケベル爆弾」を、「ヒスボラのメンバー」に配布浸透させるだけの、高度な情報収集能力と謀略能力、ヒズボラとの「信頼関係」がある。


③ 頃合を見て、ポケベル爆弾を、相応の範囲で起爆させる、組織力と意志と実行力がある
 
と言ったことが必要であり、そんじょそこらの犯罪組織やテロ組織では到底出来そうにない。イスラエルという主権国家、乃至それに準じた高度な組織にして初めて為せる業であり、(主権国家を背景としない)軍や情報部だとすると、相当デカい国(*2)のそれだろう。

 些か「レトロ感が強い」ポケベルを、「ヒスボラのメンバー」が携帯携行しているのは、「一般的に普及したスマホなどとは異なり、ポケベルの位置は特定し難いから。」との報道が、一部にはある。基本、ポケベルなるモノは「受信一方で、発信しない」であろうから、「在りそうな話」ではある。

 もしそうならば、今時ポケベルなんて使っている者は、「ヒズボラ乃至それに準じた組織のメンバーである疑いがある」・・・と言うのは、一寸言い過ぎだろうが、今次攻撃が「ヒズボラのメンバーが携帯するポケベルに仕掛けられた」のは、確からしい。
 それは、「ヒズボラにポケベルを納入する業者が、イスラエル諜報部に乗っ取られていた」とか、「ヒズボラのポケベル在庫を、ポケベル爆弾にすり替えた」とか、いずれにせよ相当に時間をかけて(恐らくは、年単位。)入念に準備された攻撃、と言うことだ。

 言い替えるならば、今次の「ポケベル爆弾攻撃」は、「ヒズボラのメンバーを狙い、狙い続けた攻撃」であり、「無差別攻撃」という批判非難は、不当であろう。

 上掲朝日社説は、ヒズボラのメンバーは戦闘員ばかりでは無く、民生委員も居る。」とか何とか屁理屈をこねているが、イスラエルからすれば、その「民生委員」も「同じ穴の狢」でしかなかろう。

 無論、ポケベル爆弾が爆発すれば、巻き添えになる市民や女子供ってのも居るだろう。それにしたって「ポケベルとしてちゃんと機能するポケベル」に仕掛けられる爆薬なんざぁ多寡が知れている。砲撃や爆撃に比べれば、遙かに被害極限出来て居ように。
 

  • <注記>
  • (*1) または、「既存市販のポケベルに似せて、ポケベルの機能も有するが、爆弾も内蔵している」製品を作る。 
  •  
  • (*2) 思いあたるのは、米軍と米CIAぐらい。中国軍&情報部でもどうかと言うレベル。ロシア軍&情報部では、無理だろう。 


 

  • 1.追伸

  • 毎1>  国際人道法は戦闘員と非戦闘員を区別し、

  • 毎2> 攻撃対象を戦闘員や軍事施設に限定するよう定める。


・・・大東亜戦争や第2次大戦って史実も、戦闘員よりも非戦闘員を攻撃し殺傷する事を目的とした戦略爆撃も、軍艦よりも商船を狙う通商破壊も、知らねぇのかよ。手前ぇは一体、幾つだよ?

 戦闘員と非戦闘員の死傷者数がトントンだったのは、第1次大戦まで、それ以降の戦闘では、非戦闘員の死傷者数の方が多いのが普通だ。「国際人道法」なるモノは、その程度の実効性と実績しか無い。

 寝惚けるなよ、毎日新聞。