• ウクライナ軍へ西側MBT(主力戦車)供与を受けて、アカ新聞各紙社説

 ウクライナが以前から西側諸国に対して主力戦車MBT(Mani Battle Tank(*1))の供与を求めていたのは、周知の事実である。何しろロシアのウクライナ侵略に抗して戦争中であり、それも陸戦中心の戦争中なのだから、「ウクライナが戦車を要求する」のは、ある意味「当たり前」だ。
 
 開戦当初のロシア軍キーウ(旧称キエフ)侵攻時に、ドローンや対戦車ミサイルでロシア軍戦車が相当数撃破され、(歴史的には「またかよ。」と言うべき)「戦車不要論」が勢いを増したりもしたが、「主力戦車MBTが、特に陸戦の攻勢では、要で在り、カギである。」点は、何ら変わらない。「対戦車ミサイルの脅威」なんてのは、中東戦争で(実にAT-2サガー”リモコン操作”ミサイル)の初実戦投入で既に判明していたこと。ドローンは「新手」ではあるが、従来従前の偵察手段(斥候兵、とか。)の延長でしかなく、本質を変えるモノでは無い。

 なればこそ、ウクライナは以前から西側諸国に主力戦車MBTの提供を求めてきた。それが漸く「念願叶って」、先ずイギリスが(数は少ないが・・・)英国製MBTチャレンジャー2(*2)の供与を決め、長いこと渋っていたドイツ(*3)が自国のレオパルド2主力戦車MBTの輸出を認め、外国からの「転売輸出」も認める、と発表した。更にはアメリカも、M1エイブラムスMBT(*4)の供与を近く決める、とも報じられている。

 で、アカ新聞どもの社説が、一寸した騒ぎになっている。

①【朝日社説】ウクライナ支援 戦争激化を防ぐ外交を
②【毎日社説】ウクライナ侵攻 米独の戦車供与 ロシアに撤退迫る警告
③【東京社説】戦闘の激化を懸念する

  • <注記>
  • (*1) 現役の戦車の殆どは、このMBT主力戦車である。例外は、水陸両用とか空挺降下(と言うより、投下、だな)とかの付加価値を付けた軽戦車がある、くらいだ。 
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  • (*2) 後述のレオパルド2やM1エイブラムスとは異なり、120mmライフル砲が主砲なので、砲弾に互換性がない、筈だ。 
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  • (*3) ドイツのレオパルド2主力戦車は、結構な目玉輸出品で、米英仏伊の様な「戦車独自開発国」以外のNATO諸国に軒並み採用されている。
  •  で、輸出先の各国からウクライナなどの第三国へ「転売輸出」するのには、製造元のドイツの認可が必要なんだ、そうな。 
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  • (*4) M1エイブラムスの現用型は、レオパルド2と同じ120mm滑腔砲を主砲としているので、共通の砲弾が使える。一方でガスタービンエンジンなので、燃料の共用性に問題を生じるかも、知れない。 


 

2022年10月、ドイツ軍の兵士たちと主力戦車「レオパルト2」の前に立つドイツのショルツ首相(中央)。DPA通信提供=AP

 

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 米英とドイツがウクライナに主力戦車を供与することを決めた。ロシアの違法な侵略を止めるための支援だが、戦争のエスカレートを防ぎ、ロシアに停戦と撤兵を求める国際結束も、より強めていく必要がある。

 

 ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年2月の開戦直後から、戦車の供与を求めていた。欧米側がすぐに応じなかったのは、北大西洋条約機構(NATO)とロシアの全面戦争に発展することを危惧したからだ。

 

 だが、1年近い戦闘をふまえて、ロシアがウクライナ領外への攻撃に踏み切る可能性は低いと見ている模様だ。ウクライナ軍の予想以上の善戦で、戦車を供与すれば奪われた領土を取り戻すことが可能になるとの判断もあるだろう。

 

 ロシアは「新たなレベルの対立に導く」(駐独大使)などと強く反発している。しかし、戦争終結を求める国際社会の声に耳を貸さず、無差別攻撃を繰り返すばかりか、ロシア軍の制服組トップを侵攻作戦の総司令官に任命するなど、戦争を拡大する姿勢を示しているのはロシアの方だ。対立激化の責任はプーチン政権自身にある。

 

 ドイツは今回の決定に至るまで一貫して戦車供与に慎重な姿勢で、ウクライナや欧米から批判的な声も上がっていた。

 

 だがドイツは、第2次大戦で周辺国やソ連を侵略して数千万もの犠牲者を出したナチスドイツ時代の反省を出発点に、戦後の外交を進めてきたことを思い起こしたい。武器は単独で供与するのではなく、他国と足並みをそろえる。国内の慎重論にも配慮して、丁寧な合意形成をはかる。そうしたショルツ政権の対応は十分に理解できる。

 

 重要なのは、ロシアの侵略を阻止し、ウクライナを支援するために、各国が揺るぎなく結束すること。それぞれの国が民意を尊重し、法にのっとって可能な貢献を行う姿勢だろう。民主主義の常道を踏み外せば、たちまち支援疲れを起こし、結束もほころびかねない。

 

 戦車の供与は、操作の訓練や保守、補給などで、ウクライナとNATO加盟国が軍事面でより結びつくことも意味する。だからこそ、戦争をエスカレートさせないための外交努力も並行して続けねばならない。プーチン政権だけでなく、中国やインド、アフリカ諸国など、ロシアに近い国々への説得に力を入れる取り組みも重要だ。

 

 その意味で今年、G7議長国と国連安保理の非常任理事国となった日本の責任は重い。ウクライナのインフラ修復や医療支援などの得意分野だけでなく、国際秩序を守る仕組みづくりの議論でも先導してほしい。

  • (2)②【毎日社説】ウクライナ侵攻 米独の戦車供与 ロシアに撤退迫る警告

 

https://mainichi.jp/articles/20230127/ddm/005/070/105000c

 

注目の連載 

オピニオン

 

朝刊政治面

毎日新聞 2023/1/27 東京朝刊 829文字

 米国とドイツがウクライナに高性能の主力戦車を供与すると発表した。これまで提供してきた兵器の中で攻撃力が最も高い。

 

 今春にロシア軍が再び全土に総攻撃を仕掛けるとの見方が強まっている。これに対抗できるよう支援するのが目的という。

 

 

 米独の戦車は世界最強といわれる。前線を突破し、敵陣深く入り込むことができる。ウクライナが最も要望してきた兵器だ。

 

 世界大戦や核戦争につながりかねないとの懸念から両国とも慎重だったが、東欧諸国を中心に供与すべきだとの意見が広がり、方針転換した。議論を重ねたうえで米欧の結束を重視したのだろう。

 

 

 戦況を大きく変える可能性があり、ロシアにとって脅威になるはずだ。

 

 1991年の湾岸戦争でイラクが使用した旧ソ連製の主力戦車を撃破したのが、米国が今回送り込む主力戦車だった。

 

 ドイツの主力戦車は、これを保有するポーランドやフィンランドなどが同時に供与するという。英国も独自に戦車を送る。

 

 

 いずれも訓練などに数カ月を要するが、実際に戦場に大量投入されれば、ロシア軍が劣勢に立たされることが予想される。

 

 プーチン露大統領には誤算だったに違いない。

 

 この冬、ウクライナの電力施設を破壊し、欧州へのエネルギー供給を遮断した。生活を苦しめて米欧の結束を乱す狙いがあった。

 

 

 暖冬であることも幸いし、エネルギー危機の深刻化は免れている。戦車の供与は米欧による長期的な軍事支援を明確にさせた。

 

 今後の焦点は、2014年にロシアが一方的に併合した南部クリミアを巡る攻防だ。米欧はウクライナが奪還することに後ろ向きだったが、今は容認する姿勢に転じている。

 

 核の懸念もある。プーチン氏は「核の威嚇」で米欧をけん制してきた。実際に使用に踏み切ることには懐疑的な見方もあるが、失敗を取り消そうとして無謀な行動に出ないとは限らない。

 

 米欧の決定はロシアに撤退を迫る警告だ。戦争を継続するなら、被害はさらに拡大する。その現実から目をそらし、愚行を続けることは許されない。

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    ③【東京社説】戦闘の激化を懸念する

https://www.tokyo-np.co.jp/article/227639?rct=editorial

 

 

2023年1月27日 07時03分

 

 ロシアによる侵攻が続くウクライナに対し、ドイツ政府が自国製戦車「レオパルト2」を供与すると発表した。ロシアを刺激する懸念から単独供与には慎重だったが、米国が主力戦車「エーブラムス」の供与を決めたことから決断した。

 「世界最強」とされるレオパルト2などの戦車供与はウクライナに大きな後押しにはなる。ただロシアは反発しており、戦闘激化や長期化の要因になりかねない。和平交渉の道を探るなど外交努力も進める必要がある。

 ドイツは第二次世界大戦後、ナチスの過去を踏まえ、紛争地への武器供与を控えてきた。

 今回のウクライナ侵攻でも「防衛的」な武器の供与を解禁するにとどめ、ウクライナや隣国ポーランド、バルト三国などから求められていた戦車の供与に、ショルツ首相は慎重だった。

 ナチス時代に旧ソ連に侵攻した独ソ戦で大きな被害を出した記憶から、ドイツが突出してロシアと対峙(たいじ)することへの反対も強い。

 ショルツ首相は戦車供与について「単独行動でなく国際的な同盟国と連携する必要があった」と北大西洋条約機構(NATO)の結束を優先させたと説明した。

 NATOのウクライナ支援は、装甲車など防衛中心の武器にとどまっていたが、米独の戦車供与に加え、英国が主力戦車「チャレンジャー2」、オランダが地対空ミサイル「パトリオット」提供を表明するなど軍事支援が強化される。

 ロシアの侵攻を止めることは必要だ。ドイツの決定が苦渋の決断であることも十分理解する。

 ただ、NATOの武器供与による支援強化は、ロシアとの戦闘を激化、長期化させ、犠牲者を増大させる可能性は否定できない。

 独野党からは「ドイツはじめNATOも戦闘の当事者になり、第三次大戦につながる恐れもある」との懸念も出ている。停戦の糸口を探る国際社会の外交努力がさらに必要な局面だ。

 日本は地雷除去や越冬のための発電機供与などでウクライナを支援する。復興や民生面で協力する重要性も忘れてはならない。

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  • (4)三者三様

 一言で「アカ新聞」と括ってしまったが、ウクライナに対する西側主力戦車供与決定に対する「アカ新聞社説」は、対応が別れた様に思う。

 上掲①社説に見る朝日は、「小狡く逃げたな。」と言うのが第一印象。西側の主力戦車供与に「一定の理解」を示しつつ、「でも外交も大事なんだよ。」と付け加えることで「精神の安定を図っている」様に見える。「平和のために、ウクライナはサッサと降伏しろ。」とは流石に言えなくなった、ってところ、だろうか。

 上掲②の毎日社説は、一応ウクライナの肩を持ち、西側主力戦車供与を「ロシアに対する警告」として、ロシアの即時撤退を求めている。
 有り体に言って、「アカ新聞らしくない、真面な社説」で在り、コレを「産経の社説」と思うことは無いと思うが、「読売の社説」と言われたら、信じてしまいそうなレベルだ。

 所が、対称的に上掲③東京新聞社説と来たら・・・
 

  • 1.「ウクライナは即時降伏して、平和にしろ。」ってのと、同根なんだが、気付いてすら居ない様だ。

 西側諸国が「ウクライナに主力戦車MBTを供与しない」と決断すれば、そりゃ「ウクライナ戦争の激化を抑制する」事は出来るかも知れない。だが「その激化抑制に依って、助かる犠牲者」の大半は侵略者であるロシア軍であり、その「ウクライナ戦争激化抑制」は、少なくとも一面「ウクライナ侵略の幇助」だ。それはまた、章題にしたとおり、「ウクライナは即時降伏して、平和にしろ。」って暴論と、同根である。

 所で、上掲東京社説の主張「西側諸国のウクライナへの主力戦車供与は、ウクライナ戦争を激化させる(恐れがある)」と言うのは、ロシアの主張そのままであることについて、東京新聞編集部やデスクや経営陣は、一体どう考えているのかね?
 
 ロシアも、東京新聞と同じく、平和の望んでいる!!」とでも、思っているのかね?だとすると、ロシアは、「平和を望んでウクライナを侵略し、侵略し続けている。」事になるんだが。「その通りである」とするならば、少なくとも「ウクライナ侵略」と「平和」は共存併存出来る、ってことになる。ああ、「ロシアの平和=ロシアによるウクライナ支配」ってこと、かな。
 そんな「平和」は、お断りだな。多分、ウクライナ国民も、お断りだろうぜ。

 或いは、ロシアと東京新聞の「西側諸国のウクライナへの主力戦車供与は、ウクライナ戦争を激化させる(恐れがある)」という主張が一致するのは、「偶然の一致と考えて居るのだろうか?偶々「気があった」とでも?

 そんな「偶然の一致」を信じるよりは、「東京新聞が、ウクライナ侵略に手を貸す、侵略者ロシアの手先」と考える方が、余程「信じられる」のだが。少なくとも左様考えた方が、「安全側」だしな。
 
 で、だ。此処が肝腎なところなんだが、「東京新聞が、ロシアの手先である」か否かは、実は大した問題ではない。
 
 上掲東京新聞社説の主張が、全面的に自主的な東京新聞の発意に依ろうが、ロシアからの秘密指令による提灯社説で在ろうが、結果は殆ど変わらず、上掲③東京新聞社説は「ロシアのウクライナ侵略に資する」と言うことが、遙かに重要である。

 私(ZERO)は此処で、「東京新聞は、ウクライナ侵略者であるロシアの手先である」と、糾弾しているのではない。上掲社説のような主張は、「ロシアのウクライナ侵略に資する」ものであり、その働き、効果は、「ロシアの手先としての働き、効果」と、大差は無い。

 それだけの罪が、責任が、上掲③東京社説には、在る、と主張しているのである。
 その罪で逮捕投獄されたり処刑されたりすることは、無いだろうが、罪は、罪だぞ。