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矢っ張り「朝日は、朝日。」らしいや。-ウクライナ侵攻を巡る朝日新聞社説とAERA記事の乖離
下掲する4本の朝日新聞社説は、ロシアのウクライナ侵攻前の「ウクライナ危機」に止まっていた頃から、ウクライナ侵攻を開始した直後、及びその後の、朝日新聞社説である。
繰り返す。朝日新聞社説、である。
先ずはご一読願おうか。
☆①【朝日社説】ウクライナ危機 秩序を壊す侵略行為だ
☆①-1【朝日社説】ロシアのウクライナ侵攻 秩序と民主を侵す暴挙だ
☆①-2【朝日社説】対ロシア政策 迎合路線から決別を
☆①-3【朝日社説】ウクライナ侵攻 撤兵求める国際圧力を
☆
(1)①【朝日社説】ウクライナ危機 秩序を壊す侵略行為だ
①【朝日社説】ウクライナ危機 秩序を壊す侵略行為だ
ウクライナ危機 秩序を壊す侵略行為だ
https://www.asahi.com/articles/DA3S15212991.html?iref=pc_rensai_long_16_article
2022年2月23日 5時00分コメント
第2次大戦後の世界秩序を揺るがす暴挙である。隣国の領土を力で侵す行為を、国際社会は決して容認しない決意を示さねばならない。
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部の一部地域を独立国家として承認した。ロシアが支える武装勢力が支配する二つの「人民共和国」を認め、ロシア軍を駐留させるという。
この「共和国」の指導者は、ロシアの傀儡(かいらい)だ。歴史的にも法的にも独立を主張できる正統性はない。プーチン氏の行動は隣国の領土の切り取りであり、事実上の侵略にほかならない。
米欧だけでなく国連事務総長も、「領土と主権の侵害」を非難した。世界の平和と安定に重責を負う国連安全保障理事会の常任理事国が、自ら国連憲章を踏みにじった衝撃は大きい。
プーチン氏は演説で、ウクライナは「我々の不可欠な部分」と訴えたが、これまでロシア自身が領土保全や停戦・和解などをめざす合意を結んできた。そうした経緯を無視した行動に正当化できる余地はない。
ロシアはさらに支配地域を広げ、ウクライナ政府に力で圧力を加える可能性もある。周辺の国々を巻き込み、ロシアと西側が対峙(たいじ)する冷戦期のような緊張が長期化する公算が大きい。
米欧などでつくる北大西洋条約機構(NATO)の首脳は、欧州の安保構造そのものが試練を受ける状態が「ニューノーマル(新たな日常)」になった、との警告を発している。
その危うさは欧州にとどまらない。国々の主権平等や法の支配の原則が軽んじられれば、アジア太平洋を含むあらゆる地域の未来は不安定化する。
米国の指導力が減退し、ロシアや中国などがそれぞれに強権姿勢を強める無極化世界が到来した、ともいわれる。だからこそ力ではなく、ルールが支配する秩序を築く責務を、日本を含む各国が果たすべきだ。
ロシアがクリミア半島を占領した際は、国際社会の対応に温度差があった。ロシアと近接する欧州と米国との間では意見の違いも目立った。当時の過ちを繰り返してはならない。
主要7カ国(G7)や欧州連合は、秩序の破壊を許さない結束の意思を発するときだ。効果のある経済制裁を発動するとともに、今なお残された外交解決の模索に全力を注がねばならない。国連安保理は紛糾するとしても、ロシアの責任をただすべきだろう。
日本政府は当面、他国の主権を顧みない国との平和条約交渉に意味はないことを悟る必要がある。岸田政権は米欧追随ではなく、率先して国際議論を主導する外交が求められる。
(2)①-1【朝日社説】ロシアのウクライナ侵攻 秩序と民主を侵す暴挙だ
①-1【朝日社説】ロシアのウクライナ侵攻 秩序と民主を侵す暴挙だ
☆ロシアのウクライナ侵攻 秩序と民主を侵す暴挙だ
https://www.asahi.com/articles/DA3S15215009.html?iref=pc_rensai_long_16_article
2022年2月25日 5時00分
ロシア国民にウクライナでの軍事作戦の開始を告げるプーチン大統領=ロシア大統領府公式ページより
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ロシアが隣国ウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。
この8年間紛争が続いていた東部地域だけでなく、首都付近も爆撃された。各地で軍部隊の侵入が伝えられている。
国の主権を侵す明白な侵略である。第2次大戦後の世界秩序を根底から揺るがす蛮行であり、断じて容認できない。
■明白な国際法違反
ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国であり、世界最大級の核武装国でもある。その大国が公然と国際法を犯した影響は甚大だ。
欧州にとどまらず、国際社会全体の規範と価値観への挑戦とみるべき局面だ。各国は結束して行動するとともに、ウクライナを支援する必要がある。
攻撃にさらされる罪なき市民を思うと、悲しみに堪えない。流血を抑えるためにも、日本を含む国際社会は紛争を止める対応措置を急ぐべきだ。
第2次大戦は1939年、ナチスドイツがポーランドを侵攻して始まった。域内の「ドイツ人の保護」が理由の一つとされたが、今回も共通点がある。
ウクライナ国内のロシア人を守るために「非武装化」をすると、プーチン大統領は演説した。だが、真の狙いは親米欧の政権つぶしにほかならない。
欧州大陸において今回は、ナチスによる侵攻以来となる大規模な侵略だ。プーチン氏の時代錯誤の演説は、大戦の悲劇を経て築かれた歴史と国連憲章がうたう秩序を無視している。
ウクライナはロシアが作り上げたもので我々の一部だ、という尊大な主張は、国際法で認められる余地はない。国の大小問わず主権国家は平等な権利を持つのが戦後の基本原則だ。
第2次大戦の戦勝国として常任理事国を務めるロシアは本来、こうした原則を守る立場にある。だが今回の行動で、責任を自ら放棄してしまった。
■独裁が生んだ暴走
自分たちが米欧から受ける不当な脅威を減じるには、一方的な軍事行動も許される――そんな特権意識をプーチン氏が抱いた背景には、ロシアの政治状況も作用している。
政権に異を唱える勢力は国会から締め出され、ジャーナリストや活動家らが暗殺され、襲われる。司法も政治的な案件では政権の支配下にある。
三権分立の体制をとってはいても、20年以上権力を握るプーチン氏のもとで独裁ができあがった。今回もロシア国民の多くは戦争を望んでいないとされるが、暴走を止められない。
プーチン氏がウクライナの米欧接近を嫌ったのも、西側の民主主義が流入すれば、ロシアでの自らの支配体制を揺るがしかねない危機感があったからだ、との見方も根強い。
その意味で、今回の侵攻が踏みにじったのは隣国の主権とともに、世界の自由と民主主義でもある。強権型の政治が広がる現代世界の危うさが露呈した事例としても、見過ごせない。
バイデン米大統領は経済制裁を表明したが、どこまでロシアを抑制できるかは不透明だ。この侵攻は結果として、秩序の守り手としての米国の力が衰えたことを改めて印象づけた。
国際安全保障をめぐる枠組みは過渡期の様相を深めている。冷戦が旧ソ連の解体で終わった30年前の一時期、米国の一極支配と呼ばれた頃があった。
そのポスト冷戦期も、イラク戦争やリーマン・ショックを経て米国が内向き志向に転じた。世界は警察官のいない無極化世界ともいわれる。
ロシアと同様に、中国も歴史的な被害意識を背景に、既存の国際秩序に挑みかねない危うい段階にある。実際は両国ともに経済のグローバル化の恩恵を受けて成長してきたが、その互恵システムそのものの価値を顧みない行動が目立ってきた。
■安保再建へ協働を
どの国であれ、自国第一主義の逸脱行動を取れば、勝者はいないのが現実だ。国際社会全体の持続可能な発展のためにも、ロシアに理性を取り戻させる働きかけが必要だろう。
この侵攻を受け、国際社会が厳しい経済制裁を科すのは当然だ。市民の悲劇を最小限にするため、北大西洋条約機構(NATO)による緊急対応も整えねばなるまい。
同時に、ロシアを説得する外交努力を途絶えさせるのは得策ではない。短期的な停戦交渉に加え、中長期の軍備管理交渉も視野に入れて、新たな安保構造の創出を探るべきだ。
日本には、アジア太平洋地域においても法の支配などの国際原則をまもる責務がある。中国が一方的な現状変更に動けば自らと地域の利益をどれほど傷つけるかを示すためにも、今回のロシアに対し決然たる態度で臨まねばならない。
列強国が力で覇を競う旧時代に戻ってはならない。もはや特定の大国に頼れない今、力ではなくルールで律される国際秩序の構築をめざし、各国が協働するときだ。今回の侵攻への緊急対応は、その一歩である。
①-2【朝日社説】対ロシア政策 迎合路線から決別を
対ロシア政策 迎合路線から決別を
https://www.asahi.com/articles/DA3S15216101.html?iref=pc_rensai_long_16_article
2022年2月26日 5時00分
これは紛れもなく、隣国への全面的な戦争である。
ロシア軍はウクライナ全土を空爆し、南・北・東部の3方面から地上部隊が侵入した。すでに多数の死者が伝えられる。
侵攻部隊は首都キエフを含む各主要都市へ進撃しており、ウクライナを制圧する意図が鮮明になってきた。
「領土を占領する計画はない」と演説したプーチン大統領はどこまで世界を欺くのか。ただちに攻撃をやめ、軍部隊をすべて撤退させるべきだ。
国際社会は何よりも、結束が問われる。侵略を許さない強固な意思表示に、具体的な行動が伴わなければならない。
主要7カ国(G7)の首脳はウクライナへの「揺るぎない支援と連帯」を宣言した。議長国ドイツは「最も経済力がある民主主義国が一致して明確な対応」をするよう提唱した。
法の支配などの普遍的価値を外交の看板とする日本は、その姿勢が試される局面である。岸田首相は、安倍政権が続けた無原則なロシア政策から決別し、真の価値観外交を打ち出さねばならない。
首相はきのうの記者会見で、侵攻を「断じて許容できず厳しく非難する」と述べ、ロシアへの追加制裁を発表した。
個人・団体の資産凍結と査証の発給停止、ロシア金融機関の資産凍結、半導体などの輸出をめぐる制裁などを決めた。G7などとの連携を強める判断である旨を説明した。
だが忘れてはならないのは、近年のロシアの強権外交に対する日本の矛盾した対応だ。
8年前にクリミアが占領された際、安倍政権は制裁を行ったものの、欧米に比べて限定的だった。北方領土交渉を意識してプーチン氏と会談を重ね、経済協力を強く進めた。
その腰の定まらぬ措置はG7の足並みの乱れを示すあしき前例だったが、岸田首相は安倍氏の路線を引き継ぐ構えでいる。ロシアがすでに軍を集結させていた今年1月、首相は施政方針演説でエネルギー分野での対ロ協力を表明した。
力による現状変更が許されないのは東アジアだけでなく、国際社会の基本ルールだ。欧州での無法な振るまいにも一貫性ある断固たる態度で臨まねば、日本の主張は説得力を持ちえない。まずは、安倍政権が設けた「ロシア経済分野協力担当相」はただちに廃止すべきだ。
国際安全保障は不安定さが増しており、日米欧は、豪州、インドなども巻き込む幅広い連携を築かねばならない時だ。その土台となるのは法の支配などの共通の原則であり、日本はその基軸を見失ってはならない。
①-3【朝日社説】ウクライナ侵攻 撤兵求める国際圧力を
ウクライナ侵攻 撤兵求める国際圧力を
https://www.asahi.com/articles/DA3S15217267.html?iref=pc_rensai_long_16_article
2022年2月27日 5時00分
国連安全保障理事会で25日、ロシア軍のウクライナからの即時撤退を求める決議案の採決で、反対を表明するロシアのネベンジャ国連大使=AP
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爆音と銃声におびえる人々の悲痛な叫びが連日伝えられる。ロシア軍は隣国ウクライナの首都キエフに迫っており、市街戦が激化する恐れがある。さらなる流血の拡大が心配だ。
プーチン大統領は、ウクライナの兵士に政権転覆の蜂起を呼びかけた。クーデターと見せかけた軍事工作を狙っているのかもしれない。
首都制圧の動きとあわせ、この戦争は、隣国の政権を親ロシア派にすげ替えるのが真の狙いである実態がみえてきた。言語道断の無法ぶりである。
ロシアはウクライナ側が武器を置けば協議に応じるというが、到底信用できない。話し合う気があるなら、まず攻撃をやめ、軍を引くべきだ。
この侵略は国際秩序を揺るがす重大事件であるにもかかわらず、国連の安全保障理事会は25日、ロシアを非難して撤兵を求める決議案を否決した。
日本を含む80カ国以上が共同で提案したが、ロシア1国だけの反対で葬られた。安保理の常任理事国の一つであるロシアは拒否権を持つからだ。
近年のシリア内戦や北朝鮮問題などでも、安保理は機能不全を続けてきた。国連創設以来の「大国一致」の原則が、足かせになっている。
今回の採決では、さらに嘆くべきことに、中国とインド、アラブ首長国連邦が棄権した。国際社会が結束して国際法違反に立ち向かう機会を逸した。
中印ともロシアとの関係が深い。政治的な配慮のようだが、近視眼的な外交だ。国々が国連憲章のもとで平和と安全を守る集団安全保障体制が崩れれば、グローバル経済の時代、どんな大国でも繁栄の未来はない。
中国の習近平(シーチンピン)国家主席は同じ25日にプーチン氏との電話協議で、「国連を核心とする国際体系と国際法を基礎とする秩序を断固守る」と述べたという。ならばなぜ、違法行為への反対を明確にできないのか。
安保理は滞っても、国連加盟国や市民社会ではさらなる動きが続いている。決議案を否決したロシアを権力の乱用と非難する共同声明を50カ国が出した。ロシア国内を含む世界各地で反戦デモが広がっている。
先日の安保理でケニアの大使が語った言葉は印象的だ。アフリカの国境は植民地時代に線引きされたが、それでも国連のルールに従うのは「平和に作り上げられた、より偉大な何かが欲しかったからです」。
世界が数々の過ちを経て打ち立てた主権平等と平和共存の理念に立ち返る時だ。国連中心を掲げる日本政府は、国連総会なども利用して国際圧力の結集に努めてもらいたい。
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とまあ、朝日新聞社説は「キレイゴト」を並べている、訳だが・・・
上掲4本の朝日社説は、ウクライナ危機及びそれに続いたウクライナ侵攻に対するロシアの責任を糾弾し、非難し、あまつさえ上掲①-2ではクリミア併合まで遡って「日本政府の対露外交方針の甘さ」を、糾弾して見せている(*1)。
「秩序を壊す侵略行為」「秩序と民主を侵す暴挙」と言う、「激烈」とも評せそうな強い非難を社説タイトルにも使っている・・・有り体に言って、「朝日らしくない」。
だが、「逃げ道」というか「裏口」というか、「姑息な手段」はしっかり用意していた、様だ。
- <注記>
- (*1) 私の知る限り、朝日新聞が「日本政府の対露宥和外交方針を非難する社説」を掲げたのは、今回が初めて、なのだが。
.【AERA】パパはウクライナ人、ママはロシア人の女性が語る”戦争”のリアル 「ケンカ煽り立てたのは西側」
【AERA】パパはウクライナ人、ママはロシア人の女性が語る”戦争”のリアル 「ケンカ煽り立てたのは西側」
パパはウクライナ人、ママはロシア人の女性が語る“戦争”のリアル 「ケンカを煽り立たのは西側」
ウクライナ侵攻
https://dot.asahi.com/dot/2022022700011.html?page=1
2022/02/27 12:51
上田耕司
筆者:上田耕司
ロシア軍がウクライナに侵攻し、各地で激しい戦闘が繰り広げられている。緊迫した状況の中、故郷から遠く離れた日本に滞在しているウクライナ人、ロシア人たちを取材した。その誰もが武力侵攻は望んでいなかった。その一方で、西側諸国の論理では説明できない、この“戦争”の複雑な背景が見えてきた。
【緊迫の民間人訓練】「領土防衛軍」の志願兵。普段は別の職業に就く民間人だ
* * *
「私のパパはウクライナ人、ママはロシア人です。だから、親戚はウクライナにも、ロシアにもいっぱいいます。私の名前は、パパの名前からウクライナの名前がついています。だけど、国籍はロシア。私はロシア、ウクライナの両方の味方なんです」
赤い爪、くりっとした目でこちらを見つめながら話した。日本から直行便で2時間45分とアクセスもよく、日本人にも馴染みの深いハバロフスク出身のロシア人女性(38)だ。その潤んだ瞳は複雑な心境をよく表していた。
ロシアは24日、ウクライナに侵攻。翌25日には、ロシアの国防相がウクライナ軍の200人以上を殺害し、空港を制圧したと発表した。
「ショックです。みんな信じられなかった。戦争にはならないと思っていたから。政治と一般の市民とは別です。戦争が早く終って欲しいと祈っています」
ロシア軍は、ウクライナの市民や民間施設は攻撃しない、あくまで標的はウクライナ国内の軍事施設と説明した。
「その言葉を信じています」
だが、ウクライナ内務省によれば、ロシア軍はウクライナにある33の民間施設も爆撃し、2人の子どもが死亡したという。
「それはロシアのせいじゃない」
ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由を、彼女なりに解釈して、こう表現した。
「アメリカやヨーロッパが、お金をウクライナの玄関にわざといっぱい置いて、ウクライナとロシアの兄弟の国同士を喧嘩させようとあおっている」
プーチン大統領は2月22日、「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」の独立を承認。この2つの地域はドンバス地域と呼ばれるが、ドンバスの平和を維持するためにロシア軍をウクライナに派遣すると表明したのだ。
「もし、ドンバスをロシアが取り戻さなかったら、そこにアメリカやヨーロッパの軍がやって来てベース(軍事基地)を置いてしまう。ロシアに近いところだから、ロシアがすごく危なくなる。取り戻さないとロシアが弱くなるから、守らなければいけないのです」
彼女のウクライナ人の友人はどう言っているのだろうか。
「ロシアは民間人を攻撃しないという約束を、本当に守るのか、守らないのか、すごく心配だと言ってました。いろいろ、心痛いが、私たちに何かできるわけではない。今は信じるしかないのです」
そしていまの心境をこう吐露した。
「今はロシアに帰りたい。いろいろ心配なので」
岸田文雄首相は25日、ロシアへの追加制裁として「ロシアの個人・団体の資産凍結と査証(ビザ)発給停止」を表明した。
「だから、ロシアと日本を行ったり来たりできない。みんな祈っています。早く戦争が終ってほしい。みんな戦争が怖い」
西側諸国はロシアを一斉に非難。ドンバス地域の平和維持を口実に国際ルールを無視して隣国領土を侵害したと報じている。ロシア人であるこの女性の言葉は、ロシア政府側の言い分を代弁しているだけかと思われるが、実は報じられているほど簡単な構図ではないようなのだ。
今度は、日本に住むウクライナ人たちの言い分を聞いてみた。
ウクライナ人の40代の女性は言葉少なに、こう言った。
「プーチンが悪い。私たちの国に戦車で入った。プーチンは頭おかしくなったんじゃないか」
しかし、ロシアという国が悪いわけではないという。こうも続ける。
「ロシアが悪いんじゃなくて、プーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領と2人が悪い」
ロシアのウラジオストック出身の女性は、ロシアとウクライナ、両方の土地で育った。
「私のお母さんはウクライナのキエフで生まれました。私も子どものころはキエフにいたけど、お母さんの仕事の都合でロシアへ渡った。ロシア、ウクライナの両方に家族もいるし、私は1万円、2万円、3万円と仕送りしてます」
かつてはロシアとウクライナは、どちらもソビエト連邦に属していた。そうした歴史もあり、市民は互いに同胞であるという意識が強い。ただ、国同士ではいまは関係性がおかしくなったと女性は感じている。
「8年前から続いていること……」
8年前の2014年2月、ロシアがウクライナ南部クリミアに軍事侵攻。前後して、ウクライナでは親ロシア政権が倒れ、親欧米路線の政権が誕生した。東部ではロシアが支援する親ロシア派武装勢力が政権と対立。ドネツク州、ルガンスク州の勢力がそれぞれ名乗ったのが、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」だった。2つの人民共和国の「建国」以降、紛争が続いているのだ。
30歳前後のロシア人女性2人から、ビザの発給停止に関する日本語の文章を読んでくれと頼まれた。「ロシアの関係者に対して、日本への入国査証の発給を停止」と読み上げると、
「今、パニック。ウクライナからも4月に来る予定だった男性がいる。予定通りに来れないんじゃないか」
そして、ロシア人から見たウクライナの状況をこう語った。
「8年前から、ウクライナでロシア語を使うと差別されるようになったんです。だいたいウクライナ人はロシア語をしゃべるんですよ。でも、ロシア語しゃべると、差別されます。だから、ロシア語をしゃべれないフリをする」
報道によると、2019年に発足したウクライナのゼレンスキー政権は、ロシア語の使用を制限する政策を打ち出した。たとえば、ウクライナ語以外で書かれた広告を禁じる法律などだ。プーチン政権の情報戦に対抗するためだという。
そうしたウクライナ政権には反発を覚えるものの、彼女たちは今回のロシアのウクライナ侵攻には賛同できないという。スマホで、ウクライナの地下鉄の駅に人びとが防空壕のように避難している写真をひらいて見せた。
「ロシアが侵攻した24日からずっと、ツイッター、フエイスブックなどのSNSを開くと、戦争の映像ばかり。仕事でいつもラジオを聞いてますが、ラジオでも戦争について語っている。ロシア人は、プーチンに賛成の人も結構いますが、それよりもっとたくさんの人が反対しています」
支持率が高いはずのプーチン大統領についてはこう語った。
「プーチンは18年くらい大統領をやっている。今年10月で、もう70歳。たぶん、死ぬまで誰にもやらせないつもりではないか。彼は筋トレをしていて体を鍛えています。顔はビューティにしていて、昔より若くなった印象。奥さんとは10年近く前、離婚しました。女性との噂はたくさんありますよ」
そんなプーチン大統領は独裁者とも呼ばれる。
「ロシア国内では、政治の反対集会もダメと言われる。『あなたは悪い、警察に行きましょう』と言われることがあります」
戦争の意味についてはこう解釈した。
「ウクライナ人とロシア人は仲良くしたい。ロシア軍がウクライナ国内のすべてのベースを爆破したら、話し合いになるのでは。昔からNATO(北大西洋条約機構)は、すごくロシアのことをいじめた。ウクライナはロシアに近いから、もしたくさんベースがあったら、モスクワを攻撃するようになるでしょう。ロシアはそれは嫌なんです」
EU(ヨーロッパ連合)は輸入天然ガスの約4割を、原油供給の約2割をロシアに依存しているとされる。経済制裁合戦は経済混乱をも招きそうだ。
「ロシアのサハリンには、ガスがあるし、いろんな天然資源があります。全部ストップすると、ロシアとウクライナだけじゃなくて、世界中で戦争が起こる可能性があります」
今回の戦争について、焦点となったエリア、ウクライナ東部のルガンスク州出身者はどのように見ているのだろうか。日本人との間に2人の子供のある40代のウクライナ人女性から話を聞くことができた。
開口一番、「心痛いですね」と言って、こう続けた。
「私はルガンスクで生まれて、18歳のころまでいました。ドンバス地域(ルガンスクとドネツク)は労働者の街なんです。工場で働いたり、石炭を採掘したりするとか。ウクライナの中にいてもまったく不自由はなかった。ソビエト連邦の時は、言葉はロシア語だったんですよ。それが紛争状態になったのは8年前から……」
前述のとおり、2014年にウクライナで親米政権が誕生し、ロシアによるクリミア併合があり、東部で親露武装勢力が活発になった。重武装化し、ウクライナ軍と激しい武力紛争に発展。15年に「ミンスク合意」で停戦に合意したものの、散発的に衝突を繰り返してきた。
「ドンバス地域の人たちは8年間怖い思いしています。普通のマンション、道路、バス、学校とかにバンバン攻撃を受けてきた。いつ、どこで爆撃を受けるかもわからない。対してウクライナのキエフの人びとは、普通に遊んだり、お酒を飲んだり、外国へ遊びに行ったりしていた」
ドンバス地域では生活するのもままならないという。
「8年間、プーチンがこの地域の人びとを食べさせていたのです。食べ物を、ロシアからトラックで送っていたと聞いています。ウクライナからは全然ないんです」
2018年、彼女は伯母に会おうと、ウクライナへ向かった。
「キエフまでは行けたんですが、私は帰化して日本のパスポートになっているので、ドンバス地域まで行けなかった。国境警備隊がいて、通行許可証がいるので」
1カ月間キエフに滞在して、伯母とは電話でしゃべっただけで、日本に戻ってきた。伯母は病気で約40日前に亡くなったという。
「私はお父さんお母さんがいなくて、祖母と伯母さんに育ててもらったのです。お母さんがわりなので、いつも連絡していた。彼女の支えで私は生きてこれたんですよね。伯母は8年前に紛争が始まる前は、子どもの誕生日にも、私の誕生日にも、必ず誕生日にきれいなハガキを送ってきてくれていました。だけど、紛争が始まったら郵便も遮断されて来なくなったし、こちらからお金も送れなくなった」
彼女は今回の侵攻については、「プーチンも8年間我慢して、本当に頭に来たからだ」と話す。だが、プーチンについては独裁者だと言って、こう続けた。
「ロシアは白熊のイメージですよね。冬眠した熊は起こされて、お腹が空いていて、コントロールできなくなっている。それが今の状況」
その一方で、これまでのウクライナ政府のやり方には相当不満があるようだ。
「ドンバスでは毎日、ミサイルが飛んでいるんですよ。だから、今、ドネツクの人はこう言っている。『今、ウクライナの人は怖いんですか。私たちは8年間、ずっとそういう思いの生活でした。毎日,毎日、爆弾がどこに落ちるかわからなかった』」
爆弾はウクライナの軍隊から発射されてきたという。
「ウクライナは、ドンバスは自分たちのテリトリーだからロシア人を追い出したいと言っている。だけど、8年間のうちに、爆弾で街は半分もない。3分の1だけ残っている。あとは石だらけ」
「ハッキリ言って経済制裁は怖くない。ロシア人は笑っている。逆に制裁のおかげで国はどんどん強くなっている。輸入に頼っていた農業は、頼らなくてもいいように農業を作り替えている。昔は、チーズをイタリアから輸入していましたが、チーズが入らなくなったら自分たちですごくおいしいチーズつくれるようになった」
そしてこういうのだった。
「ウクライナのドンバスで8年間ずっと戦闘が起きているのに、ほとんどニュースになっていない。今は、ウクライナはかわいそう、ロシアが悪いという論調ばかり。ロシアはウクライナをとるつもりはないと思います。ドネツクとルガンスクからウクライナの軍隊追い出したいだけ。ロシアの一部にならないけれども、2つは独立した地域になると思います」
ウクライナ人、ロシア人に話を聞いてみたが、誰も戦争は望んでいなかった。プーチン大統領の決断を積極的に支持する人もいなかった。しかし、市民の間にも複雑な感情が横たわっていたのも事実だ。なぜ、事態は戦争へとつながってしまったのか。今度、どうなってしまうのか。
ウクライナ人の妻がいる、元拓殖大学客員研究員で、歴史作家の田中健之氏は、こう指摘する。
「ロシアの極東地域は80%はウクライナ人なんですよ。お父さんがロシア人、お母さんがウクライナ人とか、その逆とかの人も多い。ロシア人は必ずウクライナに親戚がいるし、ウクライナ人は必ずロシアに親戚がいる。だから、ロシアとウクライナがケンカするように煽り立てていったのは西側の政治の責任ですよね」
最悪のシナリオも警戒しないといけないという。
「劣化ウラン弾による攻撃には注意が必要です。実際、イラン、イラク戦争でも湾岸戦争でも使われていた。へたに経済制裁をやり過ぎるとEUが分裂しますよ。経済制裁は西側にとってもロシアにとっても、コロナで景気が悪い時に打撃を受け、大恐慌が起こる可能性がありますよ」(田中氏)
誰も望んでいなかった“戦争”。解決の糸口はまだ見えない。
(AERAdot.編集部 上田耕司)
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2.☆矢っ張り「朝日は、朝日だった。」って所か。
上掲AERA記事を一読すれば明らかな通り、上掲AERA記事では「ロシア寄りの言い分」ばかり集めている。
が、一難酷いのは、その中で日本人の発言で、
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1> ウクライナ人の妻がいる、元拓殖大学客員研究員で、歴史作家の田中健之氏はこう指摘する。
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2> 「ロシアの極東地域は80%はウクライナ人なんですよ。お父さんがロシア人、お母さんがウクライナ人とか、その逆とかの人も多い。
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3> ロシア人は必ずウクライナに親戚がいるし、ウクライナ人には必ずロシアに親戚がいる。
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4> だから、ロシアとウクライナがケンカするように煽り立てて言ったのは西側の政治の責任ですよね」
・・・何度読んでも、前後を読んでも、上記4>冒頭の順接「だから」の意味が、私(ZERO)にはサッパリ判らない。「お互い身内同士だから、ケンカしない。」ッてんなら、遺産争族争いも、王位や皇位の継承戦争も、発生しないのが道理だが、実例は山とある。
そこをかなり無理矢理「お互い身内同士だから、戦争には至らない。」というロジックと解釈したとして、(*1)「だから戦争に至ったのは、外部の要因があるからだ。」まではロジックとして「成立」するが、その「外部の要因」を「西側の政治」と断定し、戦争自体を「西側の政治の責任」と断言出来る根拠・理由・ロジックは、私(ZERO)に全く理解できない。だから上記4>冒頭の順接「だから」が、「チットも順接として繋がらない」。凄まじいばかりの短絡思考、としか思えなかった。
「東ウクライナの親露派武装集団との内戦を、西側諸国が助長して来た。」とするプーチンの主張を、そのまま(ほぼ無条件で)「前提」とするならば(それぐらいしか、私(ZERO)には思い付かないんだが。)、ナントカ「ロシア人とウクライナ人が戦争を始めた外部要因としての西側の政治」というロジックが「結びつく」。
つまりは、上掲AER記事は、ほぼ「プーチンのプロパガンダ記事」となっている、訳である。
もとより、朝日新聞社説が朝日新聞の公式公的な主張であっても、それが「朝日新聞出版の週刊誌の記事」を掣肘するモノではあるまい。朝日新聞記者でも「朝日新聞社説に反対」という者が居ても構わないし、仮に上掲ほぼ「プーチンのプロパガンダ記事」が「朝日新聞記者全員の総意に反する主張」であったとしても「多様性の維持」という点では意味・意義のある記事、と言うことも出来よう。
更に言えば、上掲AERA記事はほぼ「プーチンのプロパガンダ記事」となっているが、上掲記事はほぼインタビューのみで形成されているから、その記事内容は「インタビュー対象者の意見」であって「AERA記者の意見・主張では無い」と言う「言い逃れ」が出来るようになっている・・・と言うより、上掲AERA記事には、殆ど「記者の主張」が(直接的には)出て来ない。ある意味「不思議な記事」になっている。
チョイと邪推を巡らすならば、「ロシアの肩を持ちたいのはやまやまだが、現状現況ではロシアを非難しなければ”格好がつかない”ので、朝日新聞社説でおおっぴらに非難しておいて、AERA記事でこっそり”ロシア擁護”を実施している。」とも、考えられなくは無い。
「ロシア擁護をする」ならするで、左様主張するが良いでは無いか。それを「週刊誌記事でこっそり擁護」とは、なんたる姑息であることか。
ま、そんな姑息さが、「朝日らしい」と言えば、「朝日らしい」のであるが。
- <注記>
- (*1) 前述の王位&皇位継承戦争や、近いところでは未だに継続中の朝鮮戦争まで、反証はタンとあるのだが、そこは無視して。