• 笑止千万、東京五輪中止論-三アカ新聞揃い踏みの「東京五輪中止社説」を撃つ

 

  • ①【朝日社説】夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める 5/26
  •  
  • ②【沖縄タイムス社説】[「宣言下でも五輪開催」]強行すれば首相退陣だ 5/25
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  • ③【琉球新報】コロナ禍での五輪 中止を決断すべきだ 5/30
  •  
  • ④【東京新聞】コロナ禍の東京五輪 大切な命を守れるのか 6/1


 と、三アカ新聞+東京新聞揃い踏みで東京五輪中止社説が出揃った。先行したのは沖縄タイムスで、直後に朝日が続き、少し遅れて琉球新報、更に遅れて東京新聞が「東京五輪中止社説」を掲げた訳だ。

 「三アカ新聞が挙って反対している」と言うだけで、さして興味も関心もなかった東京五輪に対し、開催する意味・意義がありそうだと思えてくるから、不思議だな。

  • ①【朝日社説】夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める 5/26

夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める

 

  https://www.asahi.com/articles/DA3S14916744.html?iref=pc_rensai_long_16_article

 

2021年5月26日 5時00分

 

【1】 新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、東京都などに出されている緊急事態宣言の再延長は避けられない情勢だ。

 

【2】 この夏にその東京で五輪・パラリンピックを開くことが理にかなうとはとても思えない。人々の当然の疑問や懸念に向き合おうとせず、突き進む政府、都、五輪関係者らに対する不信と反発は広がるばかりだ。

 

【3】 冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める。

 

 

生命・健康が最優先

 

【4】 驚くべき発言があった。

 

【5】 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長が先週、宣言下でも五輪は開けるとの認識を記者会見で述べた。

 

【6】 だが、ただ競技が無事成立すればよいという話ではない。国民の感覚とのずれは明らかで、明確な根拠を示さないまま「イエス」と言い切るその様子は、IOCの独善的な体質を改めて印象づける形となった。

 

【7】 選手をはじめ、五輪を目標に努力し、様々な準備をしてきた多くの人を考えれば、中止はむろん避けたい。だが何より大切なのは、市民の生命であり、日々のくらしを支え、成り立たせる基盤を維持することだ。五輪によってそれが脅かされるような事態を招いてはならない。

 

【8】 まず恐れるのは、言うまでもない、健康への脅威だ。

 

【9】 この先、感染の拡大が落ち着く保証はなく、むしろ変異株の出現で警戒の度は強まっている。一般へのワクチン接種が始まったものの対象は高齢者に限られ、集団免疫の状態をつくり出せるとしてもかなり先だ。

 

【10】 そこに選手と関係者で9万を超す人が入国する。無観客にしたとしても、ボランティアを含めると十数万規模の人間が集まり、活動し、終わればそれぞれの国や地元に戻る。世界からウイルスが入りこみ、また各地に散っていく可能性は拭えない。

 

【11】 IOCや組織委員会は「検査と隔離」で対応するといい、この方式で多くの国際大会が開かれてきた実績を強調する。しかし五輪は規模がまるで違う。

 

 

「賭け」は許されない

 

【12】 選手や競技役員らの行動は、おおむねコントロールできるかもしれない。だが、それ以外の人たちについては自制に頼らざるを得ない部分が多い。

 

【13】 順守すべき行動ルールも詳細まで決まっておらず、このままではぶっつけ本番で大会を迎えることになる。当初から不安視されてきた酷暑対策との両立も容易な話ではない。

 

【14】 組織委は医療従事者を確保するめどがつきつつあると言う。では、いざという場合の病床はどうか。医療の逼迫(ひっぱく)に悩む東京近隣の各知事は、五輪関係者だからといって優遇することはできないと表明している。県民を守る首長として当然の判断だ。

 

【15】 誰もが安全・安心を確信できる状況にはほど遠い。残念ながらそれが現実ではないか。

 

【16】 もちろんうまくいく可能性がないわけではない。しかしリスクへの備えを幾重にも張り巡らせ、それが機能して初めて成り立つのが五輪だ。十全ではないとわかっているのに踏み切って問題が起きたら、誰が責任をとるのか、とれるのか。「賭け」は許されないと知るべきだ。

 

【17】 こうした認識は多くの市民が共有するところだ。今月の小紙の世論調査で、この夏の開催を支持する答えは14%にとどまった。背景には、五輪を開催する意義そのものへの疑念が深まっていることもうかがえる。

 

【18】 五輪は単に世界一を決める場ではない。肥大化やゆきすぎた商業主義など数々の問題を指摘されながらも支持をつなぎとめてきたのは、掲げる理想への共感があったからだ。五輪憲章は機会の平等と友情、連帯、フェアプレー、相互理解を求め、人間の尊厳を保つことに重きを置く社会の確立をうたう。

 

 

憲章の理念はどこへ

 

【19】 ところが現状はどうか。

 

【20】 コロナ禍で、競技によっては予選に出られなかった選手がいる。ワクチン普及が進む国とそうでない国とで厳然たる格差が生じ、それは練習やプレーにも当然影響する。選手村での行動は管理され、事前合宿地などに手を挙げた自治体が期待した、各国選手と住民との交流も難しい。憲章が空文化しているのは明らかではないか。

 

 

【21】 人々が活動を制限され困難を強いられるなか、それでも五輪を開く意義はどこにあるのか。社説は、政府、都、組織委に説明するよう重ねて訴えたが、腑(ふ)に落ちる答えはなかった。

 

【22】 それどころか誘致時に唱えた復興五輪・コンパクト五輪のめっきがはがれ、「コロナに打ち勝った証し」も消えた今、五輪は政権を維持し、選挙に臨むための道具になりつつある。国民の声がどうあろうが、首相は開催する意向だと伝えられる。

 

【23】 そもそも五輪とは何か。社会に分断を残し、万人に祝福されない祭典を強行したとき、何を得て、何を失うのか。首相はよくよく考えねばならない。小池百合子都知事や橋本聖子会長ら組織委の幹部も同様である。

 

  • ②【沖縄タイムス社説】[「宣言下でも五輪開催」]強行すれば首相退陣だ 5/25

[「宣言下でも五輪開催」]強行すれば首相退陣だ

 

  https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/759119

 

2021年5月25日 05:00

 

【1】 東京五輪の開会式まで2カ月を切った。

 

【2】 本番目前だというのに、新型コロナウイルス感染症は一向に収束する気配がない。東京、大阪などの緊急事態宣言が、さらに延長されるのは確実な状況だ。

 

【3】 「平和の祭典」という五輪の理念も、「コロナに打ち勝った証し」という位置付けも、すっかり色あせてしまった。

 

【4】 感染拡大という大きなリスクを抱え、中止を求める声が相次いでいる。五輪開催に積極的な意義を見いだすことは難しい。

 

【5】 そんな折も折、国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府の双方から、現状を無視した不用意な発言が飛び出した。

 

【6】 IOCのコーツ調整委員長は会見で緊急事態宣言下の五輪開催について問われ、「答えはイエスだ」と断言したのである。

 

【7】 大阪では、感染拡大によって医療が逼迫(ひっぱく)し、助かる命を助けることができない「医療崩壊」が起きた。

 

【8】 緊急事態の下では、飲食業をはじめ多くの業界が休業や閉館を強いられる。

 

【9】 小規模な企業ほど深刻な影響を受け、雇用にも悪影響を及ぼす。

 

【10】 選手を除いて海外から7万8千人もの関係者が訪れる五輪を開催すれば、感染拡大のリスクは高まる。変異株が広がっているだけになおさらだ。

 

【11】 五輪の主催者はIOCである。だが、緊急事態宣言下は平時ではない。宣言下の実施をIOCが断言するのは横柄と言うしかない。

 

■    ■

 

【12】 コーツ氏発言について平井卓也デジタル改革担当相は、こう語って擁護した。

 

【13】 「パンデミック(世界的大流行)下でのオリンピック開催というモデルを日本が初めてつくることになる」

 

【14】 「国民の命と健康を守ることができるのであれば」という前置きがあったにしても、そのような前提で「パンデミック下のオリンピック開催」を積極的に肯定すること自体、国民感情を逆なでするような軽率な発言である。

 

【15】 「パンデミック下のオリンピック」は、本来、あってはならないシナリオ。「パンデミックの下ではオリンピックは開催しない」というモデルこそ打ち立てるべきだ。

 

【16】 五輪開催について菅義偉首相は「安全、安心な大会に全力を尽くす」と抽象論を語るだけで、具体的な説明を避け続けている。

 

【17】 五輪を巡る国内の空気は異様である。

 

■    ■

 

【18】 日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事は、日本の置かれた現状を「やめることすらできない状況に追い込まれている」と指摘する。

 

【19】 昨春、五輪の1年延期をIOCに提案したのは安倍晋三前首相である。

 

【20】 延期や中止に該当するかどうかは、日本政府が主体的に判断すべきことだ。

 

【21】 政府は28日にも、東京などの緊急事態宣言の延長を決める。五輪実施によって感染拡大が生じれば、首相の政治責任は重大だ。

 

【22】 中止を判断するのは今しかない。


 

  • ③【琉球新報】コロナ禍での五輪 中止を決断すべきだ 5/30

コロナ禍での五輪 中止を決断すべき時だ

  https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1330062.html

2021年5月30日 05:00

社説

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【1】 政府は28日、新型コロナウイルス対策である緊急事態宣言を9都道府県で6月20日まで延長すると発表した。会見で菅義偉首相は宣言下での東京五輪・パラリンピックの開催について「準備を進める」と述べ、観客を入れる方向で検討することも表明した。

 

 

【2】 だが宣言期限までに収束する科学的根拠はない。むしろ拡大を予期させる材料ばかりだ。感染力の強い英国やインド由来の変異株が広がる中、ワクチン接種は追い付いていない。世界を見ても接種が進んでいるのは欧米の一部だけだ。医療の逼迫(ひっぱく)は限界に近い。

 

【3】 こうした状況を踏まえ、五輪開催に国内外で強い不安の声が広がっている。菅首相は国民の生命や健康を最優先し、開催中止を決断すべきだ。

 

【4】 首相はワクチンを「切り札」として、7月末までに全高齢者への接種完了を目指す。だが12日発表の政府調査では市区町村全体の14%が7月末までに完了できないとしている。7月23日開会の五輪期間中、国民の大半が未接種だ。

 

【5】 米国の感染症の専門家は五輪開催の推進は「最善の科学的根拠に基づいていない」とし「中止が最も安全な選択肢かもしれない」と指摘する。9万人以上の関係者が集う五輪が「一大感染イベント」になる可能性に、世界から懸念の声が相次いでいる。

 

【6】 しかし首相はじめ国際オリンピック委員会(IOC)など関係者は開催に前のめりだ。開催ありきの発言や姿勢が国内外から批判を浴びている。共同通信による今月中旬の世論調査で約6割が中止を支持した。民意とかけ離れた祭典の開催に、なぜこだわるのか。

 

【7】 五輪に詳しい米パシフィック大のジュールズ・ボイコフ教授は理由は三つだとして「カネとカネ、そしてカネだ」と指摘する。そのほとんどが選手たちに使われず、大会の運営や放映、出資する人々の手に入ると説明する。米有力紙ワシントン・ポストはIOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼んだ。開催に突き進む理由が一部関係者の利権だとすれば、言語道断だ。

 

【8】 現状での開催は意義を失っている。五輪憲章は機会の平等を掲げるが、コロナ禍で準備不足の選手がいるほか、医療従事者を五輪のために確保することにも不公平感がある。選手間や住民との交流も難しい。今や政府が唱える「復興五輪」や「コロナに打ち勝った証し」は空虚に響く。

 

【9】 野村総合研究所の試算では中止した場合の経済的損失は約1兆8千億円。昨年や今年初めの宣言下での損失各6兆円以上よりはるかに少ない。むしろ五輪が感染拡大を招いた場合の損失の方が大きい。

 

【10】 コロナ禍で生活困窮者が急増した。五輪費用を困窮者支援に充てる発想も必要だ。県出身を含め選手にとっては残念な状況ではある。だが判断の先送りは事態の悪化を招く。論理性と柔軟性を欠き、一度決めたら止められない政治に国民の命は預けられない。


 

  • ④【東京新聞】コロナ禍の東京五輪 大切な命を守れるのか 

コロナ禍の東京五輪 大切な命を守れるのか 

2021年6月1日 08時07分

 

【1】 新型コロナウイルスの感染拡大がこのまま続けば、今夏の東京五輪・パラリンピックは「安心・安全」とは程遠い大会になる。人の命を危険にさらしてまで、開催を強行することは許されない。

 

【2】 東京や愛知など九都道府県の緊急事態宣言が、二十日まで延長された。感染力の強い英国型の変異株が広がる。医療が逼迫(ひっぱく)し、自宅で命を落とす人もいる。頼みのワクチン接種は遅れている。

 

【3】 東京では、一日当たりの新規感染者の減少傾向は鈍い。今後、より感染力の強いインド型が広がる恐れがあり、宣言解除の糸口は不確かだ。

 そんな中、政府や東京都、大会組織委員会は、国際オリンピック委員会(IOC)とともに「開催ありき」で突き進んでいる。海外からウイルスが持ち込まれ、大量の人の流れによって感染が拡大する懸念は拭えない。

 

◆専門家の懸念に耳を

 

【4】 五月二十八日の菅義偉首相の記者会見は、開催国の最高責任者として失格である。

 

【5】 緊急事態宣言中でも開催するかを重ねて問われ、最後まで正面から答えなかった。「イエス」も「ノー」も言わないのは、宣言中であっても開催する余地を残したいからだ、と多くの人は思う。

 

【6】 その一週間前、IOCのコーツ調整委員長が「答えはイエスだ」と開催を明言し、世論の反発を招いている。その二の舞いを避けたかったのだろうが、これほど重要な問題に言葉を濁し、大会への信頼が得られるはずもない。

 

【7】 競技場に観客を入れることについて、首相がプロ野球などを例に前向きな姿勢を示したことにも驚いた。「本当に人々の命が守れるのか」と問いただしたい。専門家の警告に、真摯(しんし)に耳を傾けるべきである。

 

【8】 例えば、政府の有識者会議メンバーの舘田一博・前日本感染症学会理事長は「宣言が出されている状況で大会ができるとは思わないし、やってはいけないというのは国民皆のコンセンサスと思う」と語った。東京都医師会の尾崎治夫会長も、開催目安として「都内の一日当たりの新規感染者が百人以下」と指摘。開催条件として「無観客」も示している。

 

【9】 大会の選手と関係者は計九万人を超え、国内スポーツとは規模が違う。当初の半数以下に減らしたというが、多さに驚くばかりだ。より大胆に削減するべきだった。

 

【10】 滞在中の健康管理や行動管理も万全とは言い難い。選手らのワクチン接種が進むのは歓迎するが、過信はできない。出国前と入国時に加え、滞在中に頻繁に課されるウイルス検査も、すり抜けるサンプルは一定割合で存在する。必ず「穴」はある。

 

【11】 また、原則的に公共交通機関を使わず、訪問先は練習会場や選手村などに限られるというものの、膨大な人数の行動確認が本当に可能かどうかは疑わしい。

 

【12】 医療従事者の大量動員にも懸念が募る。一日最大で医師二百三十人、看護師三百十人。スポーツドクターや離職中の看護師らを中心に八割程度を確保した、とされるが、地域医療への影響を検証する材料は示されていない。

 

◆意義消え、増すリスク

 

【13】 大会は本来「人類の祭典」のはずだった。平和な環境の下で一堂に会し、肉体と命のすばらしさを謳歌(おうか)する。性別、人種、宗教、国境…。お互いの差異を超え、友愛や平等など普遍的な価値観や人間性を実感する場だった。

 

【14】 だが、コロナ禍で選手の練習や競技環境が激変し、人々の交流も見込めない。失業や生活苦が広がり、大会の過剰な商業主義、膨大な経費への批判も高まっている。

 

【15】 開催の意義は色あせ、リスクばかりが増大している。そして政治と行政が大会を特別扱いし、優先する姿勢が、国民の拒否感に輪を掛けている。

 

【16】 五月に本紙が行った都内有権者への意識調査で、「中止」を求める声は60・2%に達した。

 

【17】 こうした民意に背を向けて開催を強行し、感染が拡大する事態になれば、日本の政治、世界のオリンピズムは取り返しの付かない不信にまみれるだろう。

 

【18】 何より大切なのは、人々の命と健康だ。開催できるのは、それが守られるという確信を多くの人が共有した時だけである。

 

  • 抽出「東京五輪を中止すべき理由」

 例によって丸数字は各紙の社説を、【】内はパラグラフ番号を示す。

  • <1>武漢肺炎感染拡大の可能性があるから①【7】【8】【10】②【9】③【1】【4】【5】④【1】【11】【12】【13】【19】

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  • <2>「パンデミック下の五輪は中止すべき」というルールを確立すべきだから ②【14】

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  • <3>五輪は単に「世界一を決める」場ではなく理想(平等な競争、人間の尊厳、国際交流、平和の祭典、コロナ克復)があり、それに反するから ①【18】【20】②【2】③【8】④【14】【15】

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  • <4>五輪中止した方が安く付くから/五輪開催は金がかかるから ③【9】

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  • <5>世論が反対しているから ①【17】③【3】④【8】【9】【17】

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  • <6>五輪が政権維持/選挙対策になっているから ①【22】

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  • <7>五輪は金儲けの道具だから ③【7】


 さて、一つずつ見ていくとしようか。
 

  • <2>「パンデミック下の五輪は中止すべき」というルールを確立すべきだから 

 サッパリ判らないんだが、パンデミック下の五輪は中止すべき」と言うのは、何故「べき」であり、「ルール化」されねばならない、のかね?

 五輪がある種イベントである以上、防疫とは相反的であり、防疫という観点からは「実施しないに超した事はない」というのは事実だろう。

 だが、パンデミック下にあろうとも「防疫が最優先」であるか否かは、そのパンデミック下で流行している疫病にっも依ろう。百歩どころか一億歩ほども譲って武漢肺炎が「防疫が最優先」となるような重大な疫病だとしても、一般論として「パンデミック下の五輪は中止すべき」と言うのは極論であろう。

 而して・・・果たして、武漢肺炎が、「防疫が最優先」となるような重大な疫病であろうか?少なくとも我が国における感染状況からは、「防疫が最優先」とはとても言えないだろう。日々新たな感染者数とか死者数とか報じられているが、累計死者数でも累計感染者数でも、「防疫が最優先」等と騒ぐヤツの気が知れないレベルだ。

 

  • <3>五輪は単に「世界一を決める」場ではなく理想(平等な競争、人間の尊厳、国際交流、平和の祭典、コロナ克復)があり、それに反するから 

 これは満点でないから零点だ」ってロジックではなかろうか。ある意味「理想主義・完璧主義」なのかも知れないが、現実的ではなかろう。

 私なんぞは「五輪の理想」なんぞには全く信を置いていないから、「理想が失われた」とて、何と言う事も感じない。その点、大いに「現実主義」である。

 「競争の不平等」は武漢肺炎が在ろうが無かろうが「必ずある」ものだし、「人間の尊厳に反する」ような競技や選手選考だって探せば屹度「在る」だろう。平和の祭典?朝鮮戦争が未だ継続中なのを始め世界に「戦火が絶えた事」なんて「何時在ったっけ」状態であるし、前回五輪や次回(一年後の北京五輪)と比較したって取り立てて「平和」な訳でもなさそうだ。

 ああ「コロナ克復」については、「かくも低いワクチン摂取率にして、かくも低い死者率」という点で、我が国には「東京五輪開催で、武漢肺炎克復を訴える」価値が、十分あろうさ
 
 而して、私(ZERO)の現実主義的観点からするならば、「単に世界一を決める五輪」で、何が悪いんだ?と尋ねたくなるね。

 野球やサッカーのような対戦競技や、柔道等の格闘技は「バーチャル」や「リモート」での実施は(現時点の技術では)不可能であるし、徒競走やリレーマラソンなどの陸上競技とて「面着でリアルに実施する」のと「別の会場でリモート(ないしバーチャル)に実施する」のとではかなりの差があろう。それらをリアルに「単に世界一を決める五輪」には、喩え無観客かつ無報道の「純粋な競技」であっても、相応の価値があろうが。

 

  • <4>五輪中止した方が安く付くから/五輪開催は金がかかるから 

  • <7>五輪は金儲けの道具だから 

 この二つは「東京五輪に反対している」のではなく、広く一般的に「五輪に反対している」理由の筈であろう。武漢肺炎の影響で「東京五輪の収支見込みが悪化した」とは言い得るかも知れないが、そもそも「基本的に五輪開催というのは、開催国にとっては赤字」なのであるし、「五輪開催で儲けるのは、IOCや放送業界」という図式も、久しく前から変わらない話なのだから、これらの反対理由は、「五輪反対理由」であって、「東京五輪限定の筈が無い」。

 で、これらを理由に「一般的に五輪反対するその反対論の一環として東京五輪反対」を主張する方々に是非お尋ねしたいね。貴方らは、来年予定の北京五輪にも、当然反対されるんですよね。」と。

 当然反対する筈のこんな「愚問」を敢えて「聞きたくなる」のは、上記東京五輪反対理由<4><7>を唱えるヤツバラが、「北京五輪反対」を主張しているとは、ついぞ聞いた事読んだ事が無いから。いや、繰り返すが、当然、北京五輪にも反対するんだよね。

 Yes。そうだ。北京五輪にも反対する。と答えるならば、結構。それで筋は通る。だがそれは、「五輪反対であって、東京五輪に特段反対している訳でもなければ、2021年の現時点で武漢肺炎禍下だから反対している訳でも無い。一般論として五輪に反対しているだけ、だろう。」と断定断言する。つまりは、東京五輪だから、武漢肺炎禍下だから、2021年度・令和3年だから、特に強く反対している訳ではない、筈である。言ってみれば「バックグランドノイズとしての反対論」でしかない。どんなイベントだろうが、どんな政策だろうが、在る一定数は反対者は居るモノだ。

 No。北京五輪には賛同する。というならば、さてもさても不可解だ。そのダブルスタンダードは、どこから来るのか。北京五輪は「金儲けの道具ではない」とか「安く付く」とか断定断言する根拠を、是非にも御教示願いたいモノだな。
 

  • <5>世論が反対しているから 

 その「世論」ってのは、どうやって調べたのかね?ってのが、先ず第一問だろうな。

 続く第二問は、「では、世論には、東京五輪開催中止させる権限があるのかね?」だ。

 敢えて言うならば、第二問は「修辞的疑問文」てヤツだね。即ち「世論と雖も、東京五輪開催中止を決定する権限は、無い。」だ。喩え世論調査なんかではなく、国民投票で「東京五輪開催可否」を採決し、東京五輪開催が否決された、としても、それは「強烈な東京五輪に対する逆風」とはなろうが、そこまでだ。「東京五輪中止」の決断は、世論や国民投票では、出来る筈が無い。それは、IOCなりJOCなり「五輪委員会」の職掌である。
 
 であるならば、国民投票結果ですらない、精々が世論調査結果でしかない「世論」が「東京五輪開催に反対している」としたところで、それが何であろうか。「東京五輪開催に逆風」とは言い得るかも知れないが、精々その程度。ま、その程度の「東京五輪を中止する理由」にはなる、とは認めても良いだろう。

 とは言え、世論調査結果も、世論も、かなりの「移り気」であり、そんな「逆風」は「参考になるかも知れない」程度でしかないが、な。

 

  • <6>五輪が政権維持/選挙対策になっているから 

 これも、良く判らない「東京五輪を中止すべき理由」だな。そりゃぁ日本政府は東京五輪開催を決めた。決めた事を辞めるというのは、日本政府・管政権にとっては打撃に違いない。だから「日本政府・管政権にとってダメージとならないように東京五輪を強行する」ってのは、ロジックとしては一応成立しそうではあるが・・・「東京五輪中止によって管政権が倒れる」と言うのは、想像力を大いにたくましくすれば「あり得る事」と想像出来そうではあるが、どうも現実味・迫真性が薄い。「東京五輪中止決定」から「管政権崩壊(少なくとも管首相退陣。ヒョッとして解散総選挙」までの間には、幾つもステップ&歯止めがありそうだ。従って、「政権維持/選挙対策」ならば、何も「東京五輪強行」なんかしなくても良さそうだ。とすると、「五輪が政権維持/選挙対策になっている」というのは、かなりの部分、妄想(ある種の被害妄想)なのではなかろうか?

 「五輪が政権維持/選挙対策になっている」と主張するには、少なくとも「東京五輪開催が、政権維持/選挙対策として、有効有益である」と言う事を、論理的に繋げ、説明する必要があろう。「何となく政権維持に使われて居るようだ」なんて、感覚論では「政権維持/選挙対策として、有効有益である」とは言えまい。

 逆に「東京五輪中止が、管政権へのダメージとなり、管政権打倒の契機となり得るから。」というのであれば、これは「東京五輪中止の、政権打倒への政治利用」ではありそうであるが、それを東京五輪実施による政権維持」と「言い替える」のは、妥当とは言えまい。かなり姑息な詭弁であろう。
 

  • <1>武漢肺炎感染拡大の可能性があるから

 最も広範に見られ、繰り返されたのが、この武漢肺炎感染拡大の恐れである。「東京五輪中止の最も強力な理由」と言うのは、多分「衆目の一致するところ」であろう。

 だが、防疫という点では、鎖国して戒厳令を敷いてロックダウンして、貿易も流も止めて人も物も動かさない方が、「良い」に決まっている。東京五輪中止が「防疫と言う点では利点となる」のは、先ず間違いないところだろう。

 逆に言うならば、多寡が防疫的メリットと言うだけで、東京五輪中止を決めるべきなのか?」と、私(ZERO)は問うぞ。何しろ我が国の人口当たりの武漢肺炎死者数は、世界的にもかなり低い「良い結果」であり、我が国よりも対武漢肺炎防疫に成功している国というのは、台湾はじめとして十指に余る程であろう。世界には150以上の国・地域があり、五輪へと選手団を送って来るのだから、我が国は「対武漢肺炎防疫でかなりの好位置に在る」のだし、先進7カ国の中では殆ど文句の付けようがないぐらいにトップだ(*1)。そんな我が国における「五輪中止に伴う防疫上のメリット」なんてのは、かなり限定的であろう。
 
 五輪を中止しなくても、相当に我が国の対武漢肺炎防疫は、「上手く行っている」のだから。

 無論、東京五輪開催が東京五輪中止に比べて「防疫上のリスクが高い」のは事実だろうさ。我が国は戒厳令もロックダウンも出来ないほどの弱い「特措法(それも、今回の武漢肺炎禍で泥縄で作って、だ)」しかないのだからその分も我が国の「防疫上のリスクが高い」だろうさ。
 
 だが、立民党の「スローガン」である「ゼロコロナ」に端的に表れているような「ゼロリスク」ってのは、基本的に「あり得ない」のである。それこそ正に「安全神話」である。武漢肺炎禍というパンデミック状態になかったときでも「ゼロリスク」と言う事は無く、たとえば毎年インフルエンザで相応の死者が出ていたのである(そう言えば、去年は武漢肺炎対策のおかげでインフルエンザ死者数が激減していたんだよなぁ。)。

 「アスペクタブル・リスク(受容できるリスク)」という言葉が端的に表す通り、大凡この世の全ての活動は「リスクとの折り合い」であり、バランスの上に成り立つ。そのバランスという点で「東京五輪中止に依る防疫メリットを取る」というのは、かなり極端なバランスと言うべきであろう。

 無論、再三繰り返す通り、「東京五輪実施による武漢肺炎拡大のリスク」は「在るに決まっている」。だが、それは、充分に「受容できるリスク」である、と考えるべきではなかろうか。

 「国民の命が大事」とかナントか言って「東京五輪反対」を主張しているヤツバラ(上掲社説各紙を含む)をもう一度じっくりとっくり見て、考えてみる事をオススメするな。そいつらは、本当に「国民の命が大事」と考え、ゼロリスクだかゼロコロナだかを「目指している」のだろうか、と。

 どうも私(ZERO)の見るところでは、「国民の命が大事」とか言いながら、「大事なのは自分の命だけ」と考え、「東京五輪中止で日本の信用信頼失墜と管政権打倒を目指している」様に思えて、仕方が無いぞ。

 

  • <注記>
  • (*1) 数少ない「文句の付け所」が、PCR検査とワクチン接種、だろう。