• 同じ日に、矛盾する主張を堂々と。ー【東京社説】衆参で自民3敗 政権批判と受け止めよ &【東京社説】河村名古屋市長 おごらず、地に足つけ

 そりゃ、同じ新聞社の同じ日の社説ったって(否、同じ日、ならばこそ、)書いている記者は別人だろうさ。だけど社説なのだから、「新聞社としての公式公的な主張」であることは間違いないし、どの社説もデスクなり編集長なり編集委員会なりが、チェックしてから紙面に載せている、筈である。で、あるのに・・・
 

  • ①【東京社説】衆参で自民3敗 政権批判と受け止めよ 

  • 衆参で自民3敗 政権批判と受け止めよ

  https://www.tokyo-np.co.jp/article/100521?rct=editorial

 

2021年4月26日 07時14分

 二十五日に投開票が行われた衆参三選挙区での補欠選挙と再選挙は、いずれも野党系候補が勝利した。自民党は不戦敗を含めて全選挙区での敗北となり、菅政権への厳しい民意が反映された形だ。

 

 昨年九月に就任した菅義偉首相(自民党総裁)にとって初の国政選挙。自民党は公認候補を擁立した参院広島選挙区の再選挙と参院長野選挙区で敗れ、衆院北海道2区の補欠選挙では候補者擁立を見送った。首相にとって不戦敗を含む三選挙での自民敗北は、今後の政権運営や、十月に任期満了となる衆院の総選挙に向けて大きな痛手となるに違いない。

 

 特に、参院広島は大規模買収事件で有罪が確定した河井案里前参院議員の当選無効、衆院北海道2区は鶏卵汚職事件で収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相の議員辞職に伴う選挙である。

 

 いずれも、離党したものの自民党議員による「政治とカネ」の問題が発端であり、自民党内に残る旧態依然の金権体質が、選挙の主要争点になった。

 

 自民党は参院広島再選挙で、経済産業省の官僚出身者を擁立。地元の岸田文雄前政調会長ら党幹部が現地入りして必勝を期したが、有権者の支持は得られなかった。

 

 立憲民主党の羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う参院長野補選では元衆院議員を擁立して臨んだが、強固な地盤は崩せなかった。

 

 首相をはじめ自民党は、政治とカネの問題を巡る厳しい世論を深刻に受け止めるべきである。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、感染拡大防止や医療態勢の逼迫(ひっぱく)解消に向けた有効な手だてを講じられない政権に対する不信感も、与党・自民党への厳しい判断につながったのだろう。

 

 三つの国政選挙は、衆院選や七月四日投開票の東京都議選の行方を占う前哨戦とも位置付けられ、発足半年の菅政権の政権運営や政治姿勢を問う選挙でもあった。

 

 不戦敗を含む全敗を受けて、自民党内で菅氏の下では衆院選は戦えないとの意見が出てくれば、首相交代論が一気に高まり、九月に行われる党総裁選での菅氏再選は難しくなるかもしれない。

 

 一方、野党側にも課題を残した選挙でもあった。立憲民主、共産、国民民主、社民の野党各党は三選挙区とも野党「統一候補」を立てて臨み、勝利したが、共産党の協力を巡って陣営内に亀裂も残した。次期衆院選で野党共闘を進めるには、選挙態勢の立て直しが急務となるだろう。

 

  • ②【東京社説】河村名古屋市長 おごらず、地に足つけ

  • 河村名古屋市長 おごらず、地に足つけ

  https://www.tokyo-np.co.jp/article/100520?rct=editorial

 

2021年4月26日 07時13分

 

 名古屋市民は「庶民革命の総仕上げ」を掲げた河村たかし市長の続投を支持した。戦後初めて四期目を担う市長となる。仕上げの任期は、多選によるおごりを戒め、地に足をつけた市政を求めたい。

 

 投票前の本社世論調査で、河村氏の市民税減税と市長給与八百万円の公約を「評価できる」とした回答はそれぞれ約28%、25%で、「評価できない」を大きく上回った。

 

 初当選時から掲げてきた庶民目線の政策を武器に、議会や役所などの既得権益打破に切り込む行動力への評価は、いまだに色あせていなかったといえる。

 

 河村氏は選挙戦で「子どもを一人も死なせないナゴヤ」などを訴えた。すでに中学校で実現した常勤スクールカウンセラーの小学校への拡大など、市民が強い関心をよせる教育、福祉分野の公約は最優先で実現してほしい。

 

 リニア中央新幹線の開業を見すえ、名古屋駅前と栄地区を結んで面的発展を図るなど、街づくりでも、河村流のアイデアを期待したい。

 コロナ対策で訴えた「一人最大二万円分のポイント還元」の公約は、年間五十億円の財源について「行財政改革でつくる」と説明してきたが、他の行政サービスがしわ寄せを受けないかなど、精査のうえで実行に移してほしい。

 

 この三期十二年を振り返ると、「待機児童ゼロ」「ワンコインがん検診」などの業績がある半面、蒸気機関車(SL)走行など実を結んでいない新奇な公約も目立った。議会や愛知県知事との対立、元側近やブレーンの離反などゴタゴタが相次いだ印象もある。

 

 特に、三期目に顕在化したのは力ずくで主張を通そうとする傾向。次点となった元市議、横井利明氏の健闘は、そうした河村氏の姿勢に対する市民の違和感の表れともいえよう。

 

 人事権はじめ強い権限を持つ首長は一般的に、多選により周囲の意見に耳を貸さなくなり、独善化しやすい。まして、河村氏は大都市名古屋で初の四期目市長を務める。それだけに、独断専行でない丁寧な市政運営を心がけるよう、厳しく注文をつけたい。

 

 選挙前には、愛知県知事のリコールを求める運動での不正も表面化した。河村氏が現職市長として支援したリコールである。自身が運動にどのように関わり、なぜ不正を見抜けなかったのか。重い説明責任が依然残っていることを忘れてはならない。

 

 

  • 美事なまでの二重基準・ダブルスタンダード

 まあ、言いたいことは章題で殆ど尽きているな。同じ4月25日に実施された選挙結果について、上掲①では「衆参3議席の補欠選挙で地味に党が議席を取れなかった」選挙結果を受けて「自民党は、この選挙結果を政権批判として真摯に受け止めろ。」って主張。まあ尤もらしくはあるし、「一理ある」ぐらいは、評しても良かろう。

 一方上掲②は同日の名古屋市長選挙。こちらは現職の河村市長が四選目の再選を果たした結果を受けて、「河村市長は、選挙結果に驕るな」って主張。これもまあ、これだけなら尤もらしくはあるし、「一理ある」とも評せよう。

 所が、である。上掲①前者は「選挙結果は正しい」って主張であるのに、上掲②後者は「選挙結果だからとて、全面的に正しい訳では無い」って主張である。再選を果たした河村市長に対し「選挙結果は民意だから正しい」とは主張しないし、自民党を下して衆参3議席を獲得した「野党」に対して「選挙結果とて全面的に正しい訳では無いから、驕るな」とは主張しないのである。河村市長は自民党公認候補では無さそうだから、辛うじて「あからさまな矛盾」とはなっていないが、「選挙結果に表れた民意を、どう評価するか」という点では、明らかに上掲①と②の社説は「矛盾している」のである。即ち上掲①は「民意に従え」社説であり、上掲②は「民意だからと言って、驕るな。」という「民意軽視ないし無視」社説、なのである。

 ま、別に驚かないけどね。脱原発原理主義の東京新聞は、記憶にある限り少なくとも二度、「選挙結果は“原発容認派の勝利”だが、そんな選挙結果は無視して、反原発にかじを切れ。」って社説を掲げている。無論、選挙結果が「反原発派の勝利」だったときは「民意だから従え」って社説を(常に、では無いかも知れないが)掲げている。
 
 つまりは、「東京新聞に都合の良い民意には、”民意だから従え”と主張し、不都合な民意には“民意だからと言って驕るな=民意は、無視しろ”と主張、できてしまう。」

 こう言うのは普通、二重基準・ダブルスタンダードというモノである。
 上掲二本の「並べて読むと、矛盾が目立つ」社説も、そんな「民意・選挙結果に対する東京新聞の二重基準・ダブルスタンダードを示す、新たな事績」である。

 だけどさ。「都合の良い民意にだけ従え」なんて主張では、説得力は全く無いぞ。そりゃ「民意の悪用」というモノだ。