• 何処の、どんな「時代」かね?-【朝日社説】英国の核戦力 時代錯誤の軍拡撤回を +2


 結論を先に言おうか。「寝言は、寝て言え。」
 

  • 【朝日社説】英国の核戦力 時代錯誤の軍拡撤回を 

  • 英国の核戦力 時代錯誤の軍拡撤回を

2021年3月18日 5時00分

 

 

16日、核弾頭数の上限引き上げを含む外交安保政策の見直しを発表するため、首相官邸を出て議会に向かうジョンソン英首相=AFP時事

 

 

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 人類を危険にさらし続ける核兵器の脅威を、どう下げていくか。国際社会が共有すべき目標に冷や水を浴びせる動きだ。

 

 英国が公表した核軍備増強の方針である。外交・安全保障政策を見直すなかで、保有する核弾頭の上限を今の180発から260発に引き上げるという。

 

 「他国による核兵器の増加と多様化」などを理由に挙げる。名指しはしていないが、台頭する中国や、ロシアに対抗する狙いがあるのは明らかだ。

 

 英国の核軍備は、米国やロシアに比べれば小規模とはいえ、冷戦後は減らす流れにあった。それをあえて逆転させるのは、核軍拡の競争を加速させる愚行にほかならない。

 

 英国も加盟している核不拡散条約は、核保有国に誠実な軍縮交渉を義務づけており、これに違反する疑いがある。貴重な国際ルールを維持するうえでも、撤回すべきだ。

 

 近年、核をめぐる状況は悪化を続けている。

 

 米ロ中の間で大国主義が強まり、新型核の開発が進む。米ロは新STARTと呼ばれる核削減の条約を何とか延長したが、後継条約は見えていない。

 

 中国を加えた多国間の軍縮枠組みを築かねばならないうえ、北朝鮮やイランなどの核開発を抑える方策に、国際社会は頭を悩ませている。

 

 こうしたなか、英国までが核を増やす姿勢を示すこと自体、国際社会を深く失望させる。

 

 英国の核は潜水艦に積まれて運用されており、米国の協力抜きでは維持も更新も難しいのが実態とされる。それでも核にこだわるのは、合理性を欠いた大国意識ゆえではないのか。

 

 核不拡散条約をめぐっては、この夏に再検討会議がある。1月に発効した核兵器禁止条約に加わった国々は、核保有国の無責任さを批判するだろう。

 

 保有国は、核禁条約が「分断を生む」と冷視してきたが、自らの特権的な態度こそが国際平和のモラルを壊し、亀裂を生んでいると自覚すべきだ。

 

 英国は昨年、欧州連合から離脱し、その後、アジア地域への関与を深めようとしている。

 

 日本と自由貿易協定を結ぶなど経済面にとどまらず、軍事的な動きも見せつつある。年内に就役する新型空母を、この地域へ航海派遣させるという。

 

 グローバルな存在感を高めたいようだが、核増強を含む砲艦外交まがいの行動を強めるのなら、時代錯誤に映る。

 

 日本政府が英国はじめ欧州との連携を深め、国際秩序の安定に努めるのは理にかなう。ただし、「核なき世界」の目標に背く動きに対しては、被爆国として明確に反対するべきだ。

 

 

  • 【毎日社説】英国の核戦力増強計画 軍拡競争の愚を犯すか

  • 英国の核戦力増強計画 軍拡競争の愚を犯すのか

注目の連載 

オピニオン

 

朝刊政治面

毎日新聞 2021/3/22 東京朝刊 835文字

 英政府が東西冷戦終結後、初めて核戦力を増強する方針を表明した。「核なき世界」を求める国際世論に逆行する政策だ。

 

 外交・安全保障を包括的に見直す「統合レビュー」で打ち出された。核弾頭保有数の上限を現在の180発から260発にまで引き上げる。

 

 

 インド太平洋地域で戦略的な関与を強めていくことも決めた。

 

 英国は1952年、米ソに続く3番目の核保有国になった。旧ソ連(現ロシア)の核に対抗することが目的で、冷戦期には約500発の核弾頭を保有していた。

 

 91年にソ連が崩壊したことに伴い欧州の安全保障環境は激変した。英国は98年から核弾頭数の削減に乗りだし、2010年に225発だった上限を20年代半ばまでに180発とすることを決めた。

 

 増強へ方針を転換した背景には、14年にロシアがウクライナ領クリミアを一方的に編入したことや、中国が近年、海洋進出の動きを強めていることがある。

 

 英国は昨年、欧州連合(EU)から離脱し、外交・安全保障面での存在感を欧州域外にも広げる「グローバルブリテン」構想を掲げている。核戦力の増強もその一環である。

 

 

 核拡散防止条約(NPT)は米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国に核兵器の保有を認める一方、核軍縮交渉をするよう求めている。

 

 英国の新政策は核保有の特権だけを享受し、軍縮義務を放棄している。他の保有国を刺激し、軍拡競争を招く懸念もある。

 

 

 さらに、イランなど非保有国に核を持つ口実を与えかねない。NPT体制が崩壊した場合、核兵器の使用がこれまで以上に現実問題となる危険がある。

 

 核兵器の開発や保有、使用を禁じる核兵器禁止条約が今年1月に発効した。核のない世界を求める声は一層高まっている。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で昨年延期されたNPT再検討会議が今夏、開催される。核保有国は義務に背を向けず、軍縮に乗り出さなければならない。

 

 日本は核兵器の非人道性を身をもって知る戦争被爆国である。政府は英国に抗議し、保有国に核軍縮を促すべきだ。


 その「軍拡競争」で、冷戦に勝利したのですが、何か?
 

  • 【東京社説】英国が核増強へ 時代の流れに逆行する

  • 国が核増強へ 時代の流れに逆行する

2021年4月5日 07時50分

 英国政府が核弾頭保有数の上限を引き上げる方針を表明した。理由はどうあれ、「核兵器のない世界」を目指す国際社会の潮流に逆行する愚行だ。核軍拡を誘発する恐れもある。再考を求めたい。

 この新方針は、安全保障や外交政策などの見直しとなる「統合レビュー」の中で示された。

 核弾頭を八十発増やし、二百六十発とする。いずれも、原子力潜水艦などから発射されるタイプのミサイルに搭載される見通しだ。

 増強の理由について英国政府は、「進展する安全保障環境への対応」と説明した。

 不透明な形で軍備増強を進める、中国を念頭に置いているのは間違いない。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、世界の核弾頭の総数は一万三千四百発で、やや減少傾向だ。その九割以上を米ロが保有し、中国は前年比三十発増の三百二十発だった。

 英国も冷戦時には、核弾頭約五百発を所有していたが、最近は削減を進めていた。

 英国が新たに所有する八十発は、世界全体から見れば、多くはない。しかし独自に核兵器を製造できる英国が姿勢を転換したことは、危険なメッセージになる。軍拡競争も引き起こしかねない。

 核軍縮をめぐっては、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が今年八月に予定されている。英国もNPTの締約国だ。

 NPT六条は、核兵器保有国に対して、核軍縮に誠実に取り組むことを義務づけている。英国の新方針はこれに背を向け、NPT体制を弱体化させるものだ。

 国際社会では、さらに一歩進んで核兵器を「非合法化」する動きが広がっている。

 その努力が実を結び、「核兵器禁止条約」が国連で採択され、今年一月に発効した。批准国も徐々に増えている。

 この条約の実現に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は、英国の動きを「無責任で危険」と批判した。日本の被爆者団体からは「愚行だ」との怒りの声が上がっている。当然だ。

 英国は、こういった声に耳を傾け、計画を撤回してほしい。核軍縮の枠組みを後押しし、核兵器の削減に向けて努力すべきだ。

 一方日本政府は、これまで「日本は核保有国、非保有国の橋渡しをする」と表明してきた。それなら英国政府に、核増強をやめるよう申し入れるのが筋だろう。


 

  • 【設問1】「核兵器無き世界」は、「時代の流れ」か?

 或いは、こう問うても良かろう。【設問1A】「”核兵器の無い世界”が“世界の潮流”であったことが、核兵器開発以降にあっただろうか?」

 そりゃ、どう考えたった”無い”だろう。と、私(ZERO)ならば断言断定してしまうぞ。一部の人々が、特に8月になると声高に叫ぶ「核兵器の無い世界」だが、ソビエト連邦崩壊により東西冷戦が終結した時でさえも、「核兵器の無い世界」とやらに半歩たりとも近づいたことは無い。核合意がなったりならなかったりするイランの核開発も、核合意の気配すら無い北朝鮮の核開発も、中国の大軍拡も、冷戦終結後の話であるし、ソビエト連邦崩壊後のロシアすら未だ結構な核兵器保有国だ。
 斯様に冷静冷徹に考えるならば、「”核兵器の無い世界”が”世界の潮流/時代の趨勢”な、訳が無い。」のは明らかである。

 否、核兵器保有国のほぼ単調増加と言う事実・現実からするならば、「”世界の潮流/時代の趨勢”なのは、核武装であり、核兵器保有である。」と言っても、過言にはなるまい。

 核兵器禁止条約とやらが先頃成立したのは事実だが、批准しているのは核兵器非保有国だけ。同条約を批准する核兵器非保有国の核兵器保有こそ掣肘するかも知れないが、精々が「核兵器保有国の増加に歯止めをかけた」だけであり、「核兵器の無い世界」には、半歩も近づかないどころか、微動だにしていない。
 
 因みに我が国は同条約を批准していないのだから、我が国の核兵器保有は、同条約によっては掣肘されない。

 であるというのに、己が願望だか妄想だかに毒された「色眼鏡」で見てしまうから、”核兵器の無い世界”が”世界の潮流/時代の趨勢”に見えてしまう」のである。上掲各社説の通りに、な。

 「寝言は、寝て言え。」上掲各紙社説に対しては、他に評しようが無かろう。